「『鬼郷』という従軍慰安婦をテーマとする映画が現在、韓国で大ヒットしています。観客動員数は300万人を突破し、国内だけにとどまらず、アメリカ、カナダでの公開が決定しました」(韓国芸能事務所関係者)
そもそもこの映画の製作がスタートしたのは、今から14年前。インディーズ映画だったために製作費が想定どおりに集められず、さらに、配給会社にとっては手が出しにくいテーマの作品だったことから、予定どおり製作が進行しなかった。
しかし、昨年末に日韓が慰安婦問題の合意を決定し、この問題がクローズアップされたことに端を発し、日の目を見ることになる。映画製作の事実が人の知るところとなり、公開にこぎつけることができたのだ。2月24日に公開されたが、公開前から各メディアで特集が組まれるほど注目を浴びていた。
「日本軍の残虐性をこれでもかと強調した内容になっており、日本では歴史的事実が歪曲されていると非難するメディアや有識者も多く存在します。その理由は、この映画は姜日出という元慰安婦の証言がベースとなっているのですが、姜氏の証言は二転三転することで知られており、信憑性に疑問符がついているのです。そのため、ある程度のフィルターをもってこの映画に臨まなければいけないのですが、すでに反日教育を受けている韓国人は仕方ないにしろ、アメリカやカナダなどほかの国々の人々に対しては、多大なる誤解を与える恐れが大きい。このままこの映画が世界に広まってしまえば、日本がいかに野蛮な国かということが印象づけられることになります」(映画業界関係者)
韓国人俳優すら出演に後ろ向き
さらに疑問符がつくのが、この映画の主人公が韓国人ではなく、在日韓国人が演じている点である。
その理由は、韓国人俳優にとってはこの映画に出演するメリットがまったくないからだ。韓国では、これだけ慰安婦問題が叫ばれているにもかかわらず、これらを扱った映画やドラマは数少ない。テーマがテーマだけに扱いが難しく、また慰安婦を演じることによって、俳優たちは、それらの色がつくことを恐れているからだという。
「慰安婦問題は、一歩間違えると、俳優生命を絶たれることも十分に考えられるほどセンシティブなテーマなんです。一昔前にトップ女優が慰安婦をテーマにしたヌード写真集を公開し、慰安婦に対する冒涜だと大ブーイングを受け、芸能界から干されてしまうという出来事がありました。慎重に取り扱わないと取り返しがつかないこともあります」(韓国芸能事務所関係者)
さらに日本軍も在日韓国人が演じており、なかには演技経験ゼロの素人もいるという。いずれにせよ、このような映画が世界に広まることで、日本に対する誤解が拡散される事態は好ましくないといえよう。
(文=松庭直/フリーライター)