ビジネスジャーナル > 社会ニュース > 新型コロナ、決算できない問題深刻化
NEW
鷲尾香一「“鷲”の目で斬る」

新型コロナ、“3月期決算ができない”問題が深刻化…来期業績予想「不明」企業続出か

文=鷲尾香一/ジャーナリスト
新型コロナ、“3月期決算ができない”問題が深刻化…来期業績予想「不明」企業続出かの画像1
東京証券取引所のメインルーム(「Wikipedia」より/Kakidai)

決算をどうしたらいいのか」「株主総会を開催できるのか」――。

 新型コロナウイルスの感染拡大に歯止めがかからず、世界経済に大きな影響を与えている。企業では、すでに決算手続きを危惧する声が高まっている。さらには株主総会の開催を危ぶむ声も聞かれる。

 企業で差し迫った問題となっているのは決算手続きだ。日本の企業では3月期末を決算の基準日としているところが多い。その3月期末は目前に迫っている。

「部品の多くを中国から調達しているため、新型コロナウイルスにより、かなりの影響が出ている。決算発表を行えるかは、微妙だ」(機械メーカー)

 より深刻なのは、小売、サービス、食料品などに多い2月決算の企業だ。

「2020年2月期決算自体も大変なのだが、問題は2021年2月期の業績予想。まったく、予想が立たない状況になっている」(食品関連商社)

 こうした状況に対して、東京証券取引所は2月10日、「新型コロナウイルス感染症の影響を踏まえた適時開示実務上の取扱い」を公表し、決算手続き等に遅延が生じ、決算内容等を確定することが困難となった場合の対応を提示している。

 企業決算は「事業年度の末日から45日以内」(45日ルール)に発表するのが原則。決算日が3月31日なら5月15日が決算発表の期限となる。しかし、東証では新型コロナウイルスの影響で「大幅に決算内容等の確定時期が遅れることが見込まれる場合には、45日ルールにこだわることなく、決算内容等が確定次第に開示することで“問題なし”」としている。

 ただし、企業に対して、決算発表が遅れる旨、および発表日の見込みがある場合にはその時期について、適時開示を行うことを要請している。さらに、有価証券報告書または四半期報告書の提出期限の延長申請を行うことを決めた場合には、その旨の適時開示が必要であり、できるだけ速やかに新型コロナウイルスが事業活動や経営成績に及ぼす影響等について情報開示を行うことも要請している。

 特に予想が困難となっている2020年度の業績については、「合理的な見積もりが困難となった場合や開示済みの業績予想の前提条件に大きな変動が生じた場合など」は、業績予想を「未定」とする開示を行い、合理的な見積もりが可能となった時点で、適切に開示することを求めている。

 決算とともに、企業には有価証券報告書の提出が義務付けられている。その提出について、2月10日、金融庁は「新型コロナウイルス感染症に関連する有価証券報告書等の提出期限について」を公表している。

 金融庁では、新型コロナウイルス感染症の影響に伴い、中国子会社への監査業務が継続できないなど、やむを得ない理由により期限までに有価証券報告書等の提出ができない場合は、財務局長等の承認により提出期限の延長が認められるとしている。

業績予想「未定」の企業続出

 さて、株主総会の開催に対しても、「開催は可能なのか」「株主総会は新型コロナウイルスの感染拡大で注意しなければならない“密閉された空間に人が集まるケース”に該当する可能性があるのか」「会場の手当てを考えた場合、早急に株主総会を開催するか、延期するかの結論を出す必要がある」などの声が聞かれる。

 株主総会は基準日から3カ月以内に開催することが定められている。日本の企業の場合には、基準日を決算日として設定する企業が多いため、例えば3月末を決算日とする場合は基準日が3月末となり、6月末までに株主総会を開催しなければならない。

 株主総会の開催については、法務省が2 月 28 日に「定時株主総会の開催について」を公表、新型コロナウイルスに関連して、「定款で定めた時期に定時株主総会を開催することができない状況が生じた場合には、その状況が解消された後の合理的な期間内に定時株主総会を開催すれば足りるものと考えられる」としている。

 ただし、定款に定めた基準日から3カ月以内に定時株主総会を開催できない場合には、「新たな基準日を定め、その基準日の2週間前までに公告する必要がある」との対応策を示している。

 また、利益剰余金からの配当についても、「定款で定めた日を基準日とする配当ができない状況が生じた時は、異なる日を基準日に定めて剰余金の配当をすることもできる」とした。ただし、剰余金配当の新たな基準日を定める場合は、その基準日の2週間前までに公告する必要があるとしている。

 新型コロナウイルスの影響で決算手続きや有価証券報告書、株主総会などの対応に問題が生じた場合については、延期などの対応を行うことが可能となったことで、企業は“ひと安心”できる。

 だが、最大の問題は新型コロナウイルスの影響がどの程度となり、いつまで続くのかがはっきりしないことで、企業業績への影響が測れないことにある。2019年年度決算では、当初の業績予想よりも決算内容が悪化する企業が相次ぐ可能性があり、さらに2020年度の業績予想については、「未定」あるいは大幅な減収・減益予想を出す企業が多くなりそうだ。

(文=鷲尾香一/ジャーナリスト)

鷲尾香一/ジャーナリスト

鷲尾香一/ジャーナリスト

本名は鈴木透。元ロイター通信編集委員。外国為替、債券、短期金融、株式の各市場を担当後、財務省、経済産業省、国土交通省、金融庁、検察庁、日本銀行、東京証券取引所などを担当。マクロ経済政策から企業ニュース、政治問題から社会問題まで様々な分野で取材・執筆活動を行っている。

新型コロナ、“3月期決算ができない”問題が深刻化…来期業績予想「不明」企業続出かのページです。ビジネスジャーナルは、社会、, , , の最新ニュースをビジネスパーソン向けにいち早くお届けします。ビジネスの本音に迫るならビジネスジャーナルへ!