世界保健機関(WHO)のテドロス事務局長が13日の記者会見で、安倍晋三首相を称賛したという。例えば時事通信は14日、次のように伝えている。
<テドロス事務局長は13日にジュネーブで行った記者会見で、新型コロナウイルスへの日本の対応について「安倍(晋三)首相の主導の下での政府挙げての対策」が、感染の抑制に決定的な役割を果たしていると称賛した。さらに、日本が今週、WHOの同ウイルス対策に1億5500万ドル(約166億円)の資金拠出をしたとして、謝意を表明した>
また、共同通信は14日、<外交筋は『あまりにも露骨(なリップサービス)』と述べた>と伝えている。
WHOへの寄付といえば、中国政府は3月9日、2000万ドル(21億円)を寄付することを決めたと発表したが、新型コロナウイルスの感染拡大をめぐる対応について、テドロス事務局長が中国へ配慮した発言をしているお礼だと報じられている。今回、安倍首相はWHOに称賛してもらうだけのために、中国の8倍もの寄付をしたのだろうか。
このテドロス事務局長の記者会見の前日(12日)、IOC(国際オリンピック委員会)のバッハ会長は、ドイツ公共放送のインタビューで「(東京五輪の開催・中止の延期について)WHOの勧告に従う」と述べている。つまり、東京五輪が開催できるかどうかは、WHOの判断で決まることになってしまったのだ。
日本がいくら開催するといっても、WHOが首を縦に振らない限り実現しない。IOCの意思も、もちろん日本の意思も関係ない。すべてはWHOの腹一つで決まる。そうであれば、日本としては、なんとしてもWHOを味方にしたい。といって、露骨なことをするわけにはいかない。そこで「WHOに寄付することで恩を売る」ことを考えたとしても不思議はない。
安倍首相は14日の記者会見で、具体的な経済財政政策については何も語らなかった。国民に多大な負担を強いていることは認めているが、消費税を減税することも明言せず、今後の税金の使い道は一切明確にしなかった。
一方、WHOには国会での議論は一切なく、170億円近い税金をいとも簡単に差し出したのだ。例えば170億円を「日本版CDC(アメリカ疾病予防管理センター)設立のための資金として使う」というのであれば、国民も納得するだろう。
安倍政権は、いったい誰のための政治をしているのだろう。そこまでして東京五輪を開催したいのか。