「危機を乗り切れる政治家がいない」――これが日本の真実だった。
4月1日、安倍晋三首相は「全国5000万超の全世帯に、布マスクを2枚ずつ配布する」と発表した。日本郵政の全住所配布システムを利用して、再来週から全世帯に配るのだという。
やはり、金持ちのボンボンどもに社会の窮状はわからないようだ。今、マスクが早急に必要なのは医療現場や介護施設である。新型コロナウイルスに感染していない世帯も多い中、本当に必要としている人たちに1枚でも多く届けることが先決ではないだろうか。
マスクなど、その気になれば自分たちでつくることができる。現に、筆者は手作りマスクを10枚持っている。今、すぐに必要なのはマスクを配布することではない。新型コロナウイルスという見えざる敵と戦う医療体制への大がかりな後方支援と、感染拡大により大打撃を受けている中小企業への大規模な救済策だ。
アメリカやイギリス、イタリア、スペインなどが現金給付を含める経済や雇用の対策を打ち出す中、日本は「マスク2枚」……。国民から散々金を搾り取ってきた国家が、こういうときに助けないでどうするのか。安倍首相は国民を見捨てる気ではないのか、とすら思えてくる。
保守派の論客として知られる作家の百田尚樹氏も、ツイッターで「アホの集まりか」と怒りを露わにした。教育評論家の尾木直樹氏もブログで「もう《今頃》何を考えておられるのでしょうか?今はそんなレベルの話じゃないでしょう」「遅すぎる批判が国内外から殺到しているというのに」と指摘している。
今こそ私たちは、アホな政治家を選んでしまったことを自覚するべきだ。
国防を米国任せにしてきた“平和ボケ”のツケ
政府が「緊急事態宣言」をしないのは「都道府県知事に全権を委任すると出番がなくなり影が薄くなるから」とも言われている。選挙を想定した考えなのかもしれないが、尾木氏の言うように、今はそんなレベルではない。まさに、国家の非常事態である。
2011年の東日本大震災の際に政権を担当していた民主党は、各都道府県や市町村にある程度の権限を委譲していた。それでも、非常事態を完全に乗り切ることはできなかった。安倍首相は昭恵夫人の“花見疑惑”が国会でも取り沙汰されていたが、自分の妻も上手にコントロールできないリーダーに、すべてを任せてなどいられない。
太平洋戦争の終結から70年以上、日本は国家防衛をアメリカに委ねることで、経済発展に全力を注いできた。長きにわたって「平和が当たり前」な時代を過ごしてきたため、多くの政治家がぬるま湯に浸かり、危機管理能力を磨いてこなかったのではないだろうか。
そうした現実は、国家防衛を他国任せにしてきたツケであり、こんなリーダーを選んだ私たちがいけないのだ。断っておくが、筆者は保守派でも革新派でもない、単なる現実主義者である。
これから日本は戦後最大の危機に直面する可能性が高く、危機管理に長けた政治家でなければ舵取りを任せることはできないだろう。もはや、右も左も関係ない。有権者は次の選挙で必ず投票し、何もできない現政権にNOを突き付けるべきだ。
(文=井山良介/経済ライター)