6日放送のテレビ番組『羽鳥慎一モーニングショー』(テレビ朝日系)に、安倍晋三首相や政府と太いパイプを持つことで知られる政治ジャーナリスト・田崎史郎氏が出演した。田崎氏は放送終盤、コメンテーターの玉川徹氏と新型コロナウイルスの日本国内の死亡者数をめぐり激論となった。その際、田崎氏の「肺炎で亡くなった人のことを、あとでCT検査をして、これでコロナかどうかいちいち判断しているんですよ」との発言が、議論を呼んでいる。
新型コロナの死者は全員CT検査をしている?
番組では『PCR検査なぜ少ない「政府が調査へ」』と題するコーナーで、日本のPCR検査数の少なさと死者数の少なさをテーマに議論が行われていた。激論の発端は「死亡者が少ないことということは日本の感染防止対策が奏功しているともいえる」という指摘に対して、玉川氏が反論したことだった。
玉川徹氏(以下、玉川)「検査していないのに、感染者はわからないじゃないですか。感染した人で、亡くなった人の死者数でしょ。感染が確認された人で亡くなった人の死者数」
田崎史郎氏(以下、田崎)「そうじゃなくて肺炎で亡くなった人のことを、あとでCT検査をして、これでコロナかどうかいちいち判断しているんですよ」
玉川「全部でありませんよ」
田崎「全部やっているんですよ。その結果として、今の死者数が出てきている」
玉川「最初からですか? すべての病院に対してですか? 1日400人、肺炎で亡くなっている人にPCR検査やっているんですか」
田崎「CT検査をしなさいということを言っているわけですよ」
つまり田崎氏は、原因不明の肺炎で亡くなった患者すべてにCT検査を実施した上で、新型コロナウイルスの有無を検査していると主張しているのだ。厚生労働省は確かにCT検査の結果を新型コロナ感染の有無を調べる上で、一つの指標としている。だが、その検査結果で確定診断を下すわけではない。参考までに以下、厚生労働省新型コロナウイルス感染症対策推進本部『新型コロナウイルス感染症COVID-19診療の手引き』から、CT検査に関する記載部分を引用する。
「胸部 CT 検査は感度が高く、無症状であっても異常所見を認めることがある。武漢市における患者(81 例)の胸部 CT 所見のまとめでは,79%に両側の陰影を認め、54%は肺野末梢に分布した。すべての肺野に異常を認めうるが,右下葉に多い傾向を認めた。発症から 1 ~ 3 週間の経過でスリガラス陰影から浸潤影に変化する.第 14 病日頃にピークとなることが多い」
少なくとも厚労省の手引きには、生きている患者に対するCT検査の指針しか述べられていない 。
田崎氏の発言「原理的にありえない」
今回の田崎氏の発言に対して、医師で医療ガバナンス研究所の上昌広理事長は次のように憤る。
「原理的にあり得ません。肺炎の死者は年間に10万人以上です。3カ月で2万5000人以上が亡くなっています。日本のPCR数を考えればあり得ません。また、多くが中小病院で亡くなる高齢者です。PCR検査をやっていません。これは安倍首相も同じことを言っていました。デタラメです」
東京都内の葬儀会社社員も次のように話す。
「他県はどうかわかりませんが、肺炎で亡くなった患者様のケースなどを念頭に置き、東京都、指定医療機関、火葬場はガイドラインを策定しています。ご遺体を納体袋に入れて表面を消毒するとか、棺への花入れや読経の禁止、立会人を制限させていただくなど、感染拡大防止対策をしています。というのも未検査のご遺体は大変多いので、非常に申し訳ないのですが未検査肺炎患者様のご遺体も同様の扱いとしています」
田崎氏はこれらの反論にどう答えるのだろうか。
(文=編集部)