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裁判所、職員300人が研修所で集合研修…国の“コロナ自粛”に逆行し物議、感染発生の懸念

文=編集部
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裁判所職員総合研修所(Wikipedia/nattou)

 3日放送のテレビ番組『羽鳥慎一モーニングショー』(テレビ朝日系)が、本年度採用された裁判所書記官約300人が和光市の裁判所職員総合研修所で行っている研修を取り上げた。研修生が全国各地から集まり、集団生活を送ることを問題視し、新型コロナウイルス感染症拡大を危惧するような放送内容だったため、インターネット上では物議を醸している。

「裁判所書記官養成課程」は実務研修を含めて4月から来年2月にかけて行われる。その間、合宿や教室内での講義が行われることもあり、集団感染の危険性があるというのだ。番組では、研修に参加予定の男性が匿名で登場。「団体生活なので100人単位で感染すると思う」「家族から命かけてまでいくことかと言われた」「辞めるかも」などとの談話を紹介した。

 一方、研修を統括する最高裁判所は「状況に応じて真摯に必要な対応はするが、現時点では中止しない。書記官養成課程は裁判所組織にとって必要性のたかいもの。仕事そのものとしてのぞんでほしい」との方針を示し、それに対してコメンテーターの玉川徹氏が「首都圏が感染拡大している中で、全国から集まる研修。誰が感染しているかわからないのにズレている」などと指摘した。

 最高裁判所事務局広報課の担当者は当サイトの取材に応じ、今回の放送と感染症対策の方針に関して次のように話す。

「感染の危険性が高まる『密閉』『密集』『密接』の3密にならないように対策を心掛けています。入所時には通勤ラッシュを避けて公共交通機関を利用することを呼びかけました。教室では、換気を充分に行い、従来は1教室で行っていた研修を160人収容の教室4カ所に分散して実施しています。当然、受講生の座席間隔を十分に取っています。また研修所内の入り口、廊下、教室など各場所に消毒液を設置して、こまめな消毒を励行しています。

 研修生ご自身やご家族に発熱などの症状がある場合は休暇を取得することを促しています。自治体や行政の最新の情報を踏まえて、適切な対応を図ります。受講生の健康に留意し、感染防止に細心の注意を払う方針です」

 一般企業がテレワークなどを実施し、大学を含む多くの学校が休校していることを踏まえ、今回の放送に対してTwitter上では次のような声が寄せられている。

「放送された裁判所の書記官研修が同じように和光市にある施設で例年通り行われることに危機感抱いてる研修生からの情報(書記官研修は約三百人で、首都圏の人は毎日電車等で通所とのこと)として取り上げられていました。休校措置とか言ってる傍らで国は何やってるんですかね?」(原文ママ、以下同)

「一般企業でもさすがにリモートでの研修に切り替えています。こういう感覚のズレ、ある意味パワハラ、モラハラを改善するには時間がかかるから、『緊急事態宣言』が必要かもしれませんね」

「コロナ感染予防対策をしっかりして研修するらしいけど、コロナを発症した時のシュミレーションは検討したのだろうか?」

「ヒトからヒトに感染させる新型コロナの対策をしていないと非難されて当然。一旦やめるべき。必要な研修は別の形で行うべく調整すべき」

公務員の新任者研修はほかにも

 ネット上では国税庁の税務職員約1000人が税務大学校で受講している集団研修などに関しても同様の指摘があるようだ。税務大学校の広報担当者は「国立保健医療科学院の福島靖正院長から直接指導を頂き、3密の徹底はもちろん、エレベーターのボタン一つ、寮の居室のシャワーノズルに至るまで徹底した消毒を心掛けるなど、細心の注意をもって対策をしています」と話す。

 また合宿を伴う公務員の新任者研修でよく知られているのが、新任警察官が入校する警察学校だろう。警察学校では大学卒業者は6カ月、それ以外は10カ月間、寮生活を送りながら警察官に必要な基本的な知識、逮捕術などの技能、体力を身に付ける。寮は多くの場合2人部屋だ。

 1日に本年度の初任科教養課程が始まった京都府警の警察学校では、正門の守衛所に消毒液を設置し、入校者全員の消毒の徹底を促した。式典は玄関ホールと屋外で実施するなどし、新型コロナ感染症の拡大防止対策を行ったという。今回放送の『モーニングショー』の内容を踏まえ、警察庁幹部は次のように話す。

「『外出自粛状態なのに、裁判をやっている場合か』『裁判所も閉めろ』というような批判があるようですが、裁判所は裁判だけをやっているわけではありません。特に書記官は逮捕状の発行、検察官の起訴状の受理などの業務で裁判官を補佐し、我々同様、市民生活の安全を守る重要な業務を担っています。民事でいえば裁判所が稼働していなければ破産申請などはどうするのでしょうか。

 何かあった際に裁判所が満足に稼働していなければ我々、警察の業務もすべて滞ります。新型コロナ感染症が蔓延している非常時であっても、『特定の世代だけ満足な研修を受けていない』ことはあってはならないことですし、恒常的に人員が不足しているので新任者の研修を遅らせることは現実的ではないでしょう。裁判所もライフラインの一端を担っているのです。少なくとも、世の中が混沌としている状況下だからこそ、司法の重要性は高いでしょう。

 ただ、オンライン化の遅れなど設備面での不備はあると思います。裁判所は行政府とは一線を画す三権分立の一柱ということもあり、国の予算配分で不遇な扱いを受けることが多々あり、他の官庁に比べて予算が限られています。テレビで言うように即時、テレビ会議方式での受講体制などを整えることは財政的に不可能でしょう。

 裁判所の研修と同じように、国民の皆さんの大切な税金で運営されている警察学校も同じです。また警察学校では個人の自宅では徹底できない水準で『衛生』と『規則正しい生活』を細やかかつ厳しく教えるので、入校時に感染していなければ安全かもしれません。公務員の研修自体を否定するのではなく、研修時の感染防止対策にこそ力を入れるべきだと思います」

 司法機関や警察が満足に稼働していない状況では、社会の秩序が保たれるのか疑問はある。それを維持するための人材育成はどうしても必要になるだろう。とはいえ、感染症の拡大防止は必要だ。これまでのしきたりや慣習に囚われることなく、柔軟に研修を行うことが必要だろう。

(文=編集部)

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