立憲民主党の福山哲郎幹事長(京都府選挙区)が参議院予算委員会で、新型コロナウイルス感染症の政府専門家会議の尾身茂副座長に対して行った参考人質疑のあり方が波紋を広げている。特に福山氏が尾身氏の説明を途中で遮った上で、「まったく答えていただけませんでした」などと言い放ったことについて、インターネット上で批判が噴出している。
尾身副座長の説明を途中でシャットアウト
福山氏は11日の同委で、「感染者総数は政府の報告よりも潜在的に多いという推測」について尾身氏に3回にわたり認識をただした。質疑の最後に尾身氏が東京都の陽性率を引き合いにして説明を加えようとしたところ、途中で「私が言っていることについて答えてください」「短くしてください」と言葉を挟んだ。尾身氏が説明を終えると「まったく答えていただけませんでした。残念です」と述べた。
ネット上では、「完全にパワハラだ」「恫喝のようにみえる」などと批判が殺到。国会内でも福山氏の姿勢に関する疑義が与野党を超えて広がっている。立憲民主党の衆議院議員秘書も次のように嘆息する。
「あれはないです。福山幹事長体制になってから、党内で過激なパフォーマンスが目立ち、一部の先生は眉をひそめています。本来、うちの党はファクトを積み上げて与党を追及するスタンスが主流だったはずなのに、最近はしっかり情報の裏を取らない例が増え、事前に有識者や官僚にヒアリングしてから質問に立つ例が減っている気がします。大きな声では言えませんが、菅直人元首相が取り仕切っていたころの民主党を思い出します」
福山氏「敬意をもって質問をした」と謝罪?
こうした事態に福山氏は13日夜、みずからのインターネット番組で次のように謝罪した。
「尾身氏には、この間のご尽力に感謝と敬意を申し上げて、敬意をもって質問していたつもりだが、少し言葉も含めて厳しい口調になった。不快な思いをさせた方々がいらっしゃるということで、今後は丁寧な質疑をしたいと思うし、私の本意ではなかったのでおわびを申し上げたい」
高橋洋一氏「参考人の発言を遮った福山氏は議会人失格」
一連の国会でのやり取りと、福山氏の謝罪に関し、嘉悦大学ビジネス創造学部教授の高橋洋一氏は14日、Twitterで以下のように投稿し、問題点を指摘した。
「尾身氏を参考人として国会に呼びながら、その発言を遮ってしまった福山氏は議会人として失格でしょう」
さらに高橋氏は当サイトの取材に対し、次のように話した。
「人間の資質がどうこうというより、議会運営のやり方として、福山哲郎議員のやり取りに関して所感を投稿しました。国会というのは基本的に、国会議員同士のやり取りの場です。
ただ議題によって今回のように参考人は与野党合意のもとで呼ばれます。その際は、とにかく参考人の意見を聞くのが国会の常識でした。
多くの参考人は自分の仕事や時間を犠牲にして出席しています。参考人の都合で国会日程が決まるわけではないからです。私も何度か参考人として国会に呼ばれたことがあるのですが、多くの場合、出席の要請があるのは前日など直前です。参考人が国会からの招致を拒否するのは容易ではありません。そのため、いろいろなスケジュールを繰り合わせて出席します。そういう事情で参考人が招致されていることは、多くの国会議員も知っています。
だからこそ、参考人からどのような意見が出ても最後まで聞くことが国会審議の正しいあり方です。仮に自分たちに不都合な意見が出たとしても、最後まで意見を聞くことが必要です。その意見を与野党でどう取り上げるのかは自由ですが、そもそも意見を聞かないというのは前代未聞です。意見を聞かない参考人質疑はあり得ません。
今回の福山議員の質問では、明らかに参考人の話を途中で遮っていました。しかも福山議員は立憲民主党幹事長であり、野党の代表のひとりとして国会審議をリードし、適切に運営する立場にあります。だからこそ、今回の質問には驚きました」
国会は言論の府だ。まず相手の話を聞かなければ議論などできないはずではないのか。
(文=編集部)