東京では新型コロナウイルスの感染者が、7月7日まで6日連続で100人を超え、7月9日には200人を超えた。小池百合子都知事は7月4日、「不要不急の他県への移動はご遠慮いただきたい」と都民に呼びかけた。西村康稔経済再生担当相は7日の記者会見で、小池氏に「これまで通り県と県の間の移動は自由」と電話で伝え理解を得たことを明らかにした。
全国では、東京での感染者増加をどう見ているのか。東京からの観光客に来てほしいか、遠慮してほしいか、各地の観光協会などに聞いた。
鳥取市観光コンベンション協会の担当者は言う。
「内心は来てほしいんですけども、鳥取市ではたとえば7月2日に感染が確認された男性が、6月19日から3日間、東京を訪れていることがわかっています。観光については今は、鳥取県内の人々を対象に取り組んでいるのが実情です。中国地方には交流を広げていこうかということを県としては言っていますけど、それ以外の地域にはまだご遠慮願いたいという方針です」
観光客への呼びかけをまだ限定しているというのは、大阪観光局も同じだ。
「基本的には、東京から来てほしくないというわけじゃないです。だけど本格的な全国移動というのは観光部分では7月いっぱいは△だと思います。今は関西圏からの集客ということでやっています。全国に呼びかけるのは、8月のGo Toキャンペーンが始まるというタイミングで想定しています。今月に関してはそんなには東京の方は求めていないんですけど、本格的に始まったら、別に東京の方がどうのこうのって言うつもりもないので、感染拡大防止にご注意いただきながらということになると思います」
おかやま観光コンベンション協会の担当者は、東京からの観光客について言う。
「個人的には、ぶっちゃけ×のほうですね。新型コロナが収まれば、ぜひ来ていただきたいんですけども……。状況的には、温度差があるような気がするんですよ。東京の状況は数字しかわからないので、判断には苦慮するような状況です。東京の方がいらして、感染が広がるということも考えられるので、今はちょっと控えたいところではあります。うちのほうも各施設で感染対策予防はしているので、来るなとも言えないですけど……。これからGoToキャンペーンが始まりますし、経済活性化しようという時に、来るなというのもちょっと違う気がするんですけどね」
「来ないでくださいということは申し上げていません」
東京と接している、神奈川県はどうなのだろうか。県の観光企画課の担当者は語る。
「県としては今、観光施策をどうしているかというと、神奈川県民に対して神奈川県内を観光してくださいという案内をしているんですね。ですけど6月19日以降、県境を越えて移動をするということの自粛が解除されています。それでも、今の段階では積極的に、東京に限らず県外、もしくは国外から観光客を誘致するっていう施策は今、取っていないんです。ですけど自粛要請は解除されてますから、いらっしゃる方はいらっしゃると思うんです。そうした方々に、来ないでくださいということは申し上げていません。
神奈川県では、感染防止対策取組書という取り組みを行っていて、感染防止対策を行っている店舗さんが、それを外向けに表示するようになっています。LINEコロナお知らせシステムというのがあって、そうしたお店に利用者が立ち寄った時にスマホなどでQRコードを読み取っていただくと、県のLINE公式アカウントに登録され、店に訪れた日時が記録されます。あとで、お店で感染者が出た時に、同じ時間帯にいた利用者にLINEでお知らせするシステムになっています。これは県民以外の方でも利用できますので、来県する際にはぜひご利用いただきたいです。
今の県の立場としては、県外から積極的に来てください、とは申し上げられない、そういう段階ではないかなと思っていますが、来る人を拒んでいるということは今のところありません」
岩手県観光協会、三重県観光連盟、京都府観光連盟は、来てほしいとも来てほしくないとも言えないとのことであった。北海道観光振興機構の担当者は言う。
「個人的な見解になりますが、正直なところ、北海道の観光はかなり大きなダメージを受けていますので、北海道にお越しいただくのはウエルカムです。いろんなところで新型コロナウイルス感染対策が講じられていますし、北海道にご旅行に来られるお客様御自身も、感染症対策をされていると思います。そういうことをご自身でなされている方には、どうぞお越しいただきたいです。
飛行機もまだ便数は限られていますけども、千歳空港などに入って来ております。新型コロナウイルスとの長期の闘いを見据えて、新北海道スタイルを打ち出していますが、これを定着させるなどの取り組みをしっかり進めています。お客様も感染を拡大しないように十分に気をつけながら、ご旅行していただけるといいなというふうに思っています」
沖縄、旅行者に詳細な呼びかけ
沖縄県観光協会の担当者は、来県者に対する取り組みを語る。
「沖縄県から『沖縄 Tour Style With コロナ』というものが出されています。6月19日以降全国的に移動規制が緩和されて、来県自粛も解除されたことから、こうしたアクションプランをもって、水際対策などを行いながらお客様の受け入れを再開しております。東京では感染者が少しずつ増加している状況ではありますが、来ないでくださいということをこちらから発信しているということはございません」
「沖縄 Tour Style With コロナ」を見ると、観光関連業者が取り組むべき項目が詳細に記されている。旅行者専用相談センターが設置され、感染症に関する情報収集・伝達・発信を行うことが明らかにされている。旅行者に対してはタビマエ(出発前)、タビナカ(旅行中)、タビアト(旅行後)に分けて、詳細な呼びかけが記されている。
西村大臣は7月7日の会見で、感染拡大防止と経済活動の活性化の両立を目指すことを強調した。しかしその具体策を見つけるのは、簡単ではないようだ。
(文=深笛義也/ライター)