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野菜生産が危機、重要な外国人実習生入国制限…米国産豚肉、輸入6割減で価格高騰

文=小倉正行/フリーライター
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「Getty Images」より

 新型コロナウイルスのパンデミックの下、今、日本にひたひたと食糧危機が迫ってきている。新型コロナウイルスの感染拡大の影響で各国において大規模な移動制限と物流混乱が起こり、食料輸出国において自国の食料確保を優先するために食料の輸出制限措置が広がっている。

 その動きは5月1日現在、小麦ではウクライナ、北マケドニア、ユーラシア経済同盟、米ではベトナム、カンボジアなど15カ国に及んでいる。タイでは国内の供給不足に対応するために鶏卵の輸出を禁止した。4月1日にはFAO(国際連合食糧農業機関)とWHO(世界保健機関)、WTO(世界貿易機関)の事務局長が連名で、「食料品の入手可能性への懸念から輸出制限のうねりが起きて国際市場で食料品不足が起きかねない」と警告の声明を発表した。

 また、4月21日にはG20農相臨時会議が開かれ、「国際市場における食料価格の過剰な乱高下につながり、世界人口の大部分、特に食料安全保障が低い環境で生活している最も脆弱な人々の食料安全保障と栄養を脅かしかねない、いかなる不当な制限的措置も行われないよう注意する」との声明を採択した。

移動制限で農業労働者が確保できず

 他方、各国で行われているコロナ感染防止のための移動制限が、外国人労働者に大きく依存している欧米の農業に脅威を与えている。米国では、昨年25万人以上の外国人労働者が農業に従事していた。欧州でも旧東欧諸国からの労働者が農業に従事していた。英国では、東欧からの7〜8万人の労働者が農作物の収穫などに従事していたが、移動制限で不足し、畑の作物が腐ると警告されている。

 ドイツでも10万人の農業労働者が不足しているとされている。イタリアでは毎年、東欧諸国などからの約30万人の季節労働者が農作業に従事していたが、入国できず、食料生産が危機的となっているとされている。移動制限によって外国人労働者が農業に従事できなければ、欧米では作付けが、南半球のオーストラリアでは収穫作業が困難になりかねない。

 これだけではない。米国では食肉工場で新型コロナ感染が広がり、食肉工場が相次いで閉鎖され、食肉不足も懸念されている。現に米国の食肉工場の閉鎖で、日本への米国産豚肉の輸入量は60%減少し、米国産豚肉の価格が高騰している。

日本でも2400人もの外国人技能実習生が入国できず

 このような動きは日本でも発生している。現在、日本では農業の年間雇用労働者に占める外国人労働者の割合(2015年)は、茨城県34%、長野県18.8%、香川県17.8%とかなりの比率になっている。これらの県では野菜生産が主で、茨城県ではピーマン、白菜、チンゲン菜、長野県ではレタスなどの高原野菜、香川県ではブロッコリーなどの主産地となっており、外国人技能実習生によって生産が支えられていた。しかし、新型コロナの発生で、2400人もの外国人技能実習生が入国できず、産地の野菜生産に深刻な影響を与えている。

 現在、コロナ禍で閉鎖していたホテルや旅館、運送関係の従業員が臨時に農業生産に従事することによって最悪の事態は避けられているが、経済が回復するにつれ、こうした方々が本業に戻ることによって、夏以降の野菜生産が立ち行かなくなることが想定されている。

 さらに懸念されているのが、今年の秋から冬にかけて猛威を振るうことが恐れられているコロナの第2波による影響である。まだ、ワクチン開発・製造が間に合わないなかで、第2波は第1波より感染者数も死者数も上回ると想定されている。当然、世界の食料輸出制限措置は広がるとともに、農業労働者の確保もいっそう困難になり、食料生産は減産することになるであろう。

 まさに、食料自給率37%の日本に食糧危機が迫ってきているといえる。

(文=小倉正行/フリーライター)

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