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“ヘルシー”と人気の食肉代替食品、食品添加物の塊だった…相乗毒性の検査行われず

文=小倉正行/フリーライター
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「gettyimages」より

 今、米国で食肉代替食品が売上を伸ばしている。大豆などで食肉をまねてつくる植物由来食肉様食品(PBM)の売上高は856億円と、米国の食肉売上高の2%を占め、特にえんどう豆でつくった代替肉パテを使ったハンバーガーがヒットしている。

 もともと米国は430万人のベジタリアンと370万人のビーガンが存在しており、食肉代替食品を受け入れる素地はあったといえるが、このようなヒットを招いた背景には、地球温暖化防止の観点より現在の畜産から植物由来食肉様食品へ切り替えようという動きがある。

 昨年の8月にIPCC(国連の気候変動に関する政府間パネル)は、「気候変動と土地」を公表した。この特別報告書は、気候変動と食料供給システムとの関係を解明し、私たちの食生活のあり方にまで警鐘を鳴らしたことで世界的に注目された。報告書では、世界の食料システムが温室効果ガスのうち21~37%を占めると推定された。

 同報告書は温暖化の緩和を進めるために、「食品ロスおよび廃棄物を含む、生産から消費に至るまで食料システム全体にわたって対応の選択肢を導入」することを求めるとともに、「食生活の変化による総緩和ポテンシャル(温室効果ガス削減効果)は2050年までに70~80億トン/年になると推定」している。「食生活の変化」とは、肉よりも米やトウモロコシなどの穀物を多く摂る食生活に変えることである。

「粗粒穀物(トウモロコシ等の雑穀類)、マメ科植物、果物及び野菜、木の実及び種子などの植物性の食品、並びにレジリエントで持続可能な、GHG 排出量の少ないシステムにおいて生産された動物性の食品を特徴とするバランスのとれた食生活は、人間の健康面で大きなコベネフィットを生むとともに、適応及び緩和の大きな機会を提供する(確信度が高い)。食生活の変化によって、2050 年までに数百万平方 km の土地を解放し(確信度が中程度)、対策なし(BAU)の予測と比較して70~80億トン/年の技術的な緩和ポテンシャルを提供(確信度が高い)することができるだろう」

 このような地球温暖化防止のための肉依存の食生活の転換を求めるIPCC報告書を受けて、食肉代替食品の導入や開発が促進している。

米国では非営利組織が食品医薬品局に異議申し立て

 食肉代替食品の先進国である米国では、ビーガン向けの「インポッシブルバーガー」をめぐって論争が起こっている。食肉代替食品は食肉と同様な食感を出すために、大豆レグヘモグロビンを添加しているが、これを生産するために遺伝子組み換え酵母を使っているのである。米国の非営利組織「食品安全センター」は、これを色素添加物として認可した米国食品医薬品局(FDA)に対して、遺伝子操作された酵母の試験を求めなかった点などを挙げて異議を申し入れたのである。

 一方、日本においても食肉代替食品の販売が始まっているが、ほとんど知名度は上がっておらず、それらの商品に対する論評は多くはない。筆者もそれらの商品を購入してみたが、驚いたのは、そこに使われている食品添加物の多さである。

 ある商品の原材料名を紹介すると、以下のようになる。

「大豆加工品(脱脂大豆、玄米粉)、たまねぎ、豆乳発酵食品(豆乳、植物油脂、デキストリン、食塩)、植物油脂、パン粉、粒状大豆たんぱく(脱脂大豆、でんぷん、植物油脂)、砂糖、でんぷん、粉末卵白、粉末状大豆たんぱく、ブラウンルウ(小麦粉、植物油脂、ぶどう糖)、りんごペースト、食塩、トマトペースト、香味パウダー、デキストリン、調味ペースト、酵母エキス加工品、酵母エキス、ウスターソース、赤ワイン、野菜ブイヨン風味パウダー、食物繊維、香辛料、しょうゆ加工品、セロリパウダー、酢酸(Na)、増粘剤(加工デンプン)、カラメル色素、トレハロース、調味料(アミノ酸等)、香料、グリシン、安定剤(大豆多糖類、ペクチン)、チアミン塩酸塩、D-キシロース、酵素、ショ糖脂肪酸エステル、PH調整剤」

 まさしく食品添加物の塊のような状況である。業界も肉の風味をつくり出すために食品添加物を使用していると認めている。食品添加物は相乗毒性の検査が行われていない。このような食肉代替食品が日常的に食されるようになれば、食品添加物の摂取量も急増することになり、私たちの健康面への影響も無視できなくなる。

 また、表示面でも米国では大きな議論が起こっている。畜産業界は、従来の方法で収穫された肉以外の食品に対して、「clean meat(培養肉)」のような食肉を連想させる表示を禁止することを求めている。日本ではまだ食肉代替食品が浸透しておらず、このような論争は起きていないが、いずれ大きな問題になってくるであろう。

(文=小倉正行/フリーライター)

小倉正行/フリーライター

小倉正行/フリーライター

1976 年、京都大学法学部卒、日本農業市場学会、日本科学者会議、各会員。国会議員秘書を経て現在フリーライター。食べ物通信編集顧問。農政ジャーナリストの会会員。
主な著書に、「よくわかる食品衛生法・WTO 協定・コーデックス食品規格一問一答」「輸入大国日本 変貌する食品検疫」「イラスト版これでわかる輸入食品の話」「これでわかる TPP 問題一問一答」(以上、合同出版)、「多角分析 食料輸入大国ニッポンの落とし穴」「放射能汚染から TPP までー食の安全はこう守る」(以上、新日本出版)、「輸入食品の真実 別冊宝島」「TPP は国を滅ぼす」(以上、宝島社)他、論文多数

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