中国、世界で覇権拡大…情報通信網を掌握、“世界の警察”化で他国の共産主義化工作も
8月26日、中国軍が大陸部から南シナ海に向けて中距離弾道ミサイル4発を発射したという報道が流れました。このニュースを見て、中国はついにここまでやるようになったか(米国に平然と武力で盾突くまでに増長した)と感じました。
そして2日後の8月28日には安倍首相が辞職を発表しました。国家防衛のため、憲法改正に最も積極的な宰相であり私も期待していただけに、この報道には大きなショックを受けました。病気が原因とのことでやむを得ませんが、個人的には残念でなりません。国と国民を守るには諸外国との良好な関係構築が欠かせませんが、私が社会に出てからの約30年間を振り返ると、特に外交面において安倍首相は歴代首相の中でも群を抜いて成果を挙げたというのが私の個人的な評価です。
新型コロナウイルス対策でもおそらく不眠不休で陣頭指揮を取られたと思いますし、8年近くもの長い間、持病を抱えつつもなんとかコントロールしながら奮闘されてきたと想像します。首相の年収は4,000~5,000万円といわれていますが、特に決断には大きなエネルギーを要するにもかかわらず、これほどの激務をこんな激安の賃金で遂行されているとは本当に頭が下がります。日がなのんびりとこんな原稿を書いている私のほうが多くもらっているのですから、安倍首相にはねぎらいの言葉しか見つかりません。
なお議員としては継続されるようですので、その知見と経験を活かし、体調に留意しながら後方支援をしていただけたらと思います。
次期政権に期待すること
さて、この原稿を書いている現在(8月31日)はまだ次期首相は決まっていませんが、次の政権(あるいは来年9月以降に決まる新政権)には、ぜひ日本が名実ともに専守防衛ができるよう、憲法改正をお願いしたいと思っています。
新型コロナウイルス対策は誰が首相を務めても大差はなさそうです。経済を回そうとしてもアメリカやブラジルのように叩かれる。逆に東京都のように締め付ければ経済は焼け野原となり、別の意味で死人が出る。接触を減らす対策よりも、ある程度の感染は所与として両立できる体制をつくるしかなさそうです。経済や教育、福祉や社会保障の問題も、首相だけではどうにもならず、優秀な官僚と手を取り合っていくしかない。
私も子どもがいるので教育政策には注視していますが、たとえば児童学生にタブレットを配布するなどは本質でもなんでもなく、コンテンツや教育プログラムそのものを改革しないといけないのに、ここにトップダウンのリーダーシップを発揮されても現場との乖離が広がるだけでしょう。
官邸と官僚が手を取り合うことを妨げているのが、2014年に制定された内閣人事局です。それまでは現場が人材登用を決めていたのですが、官邸が各省庁の幹部の人事権を握ったことにより、官邸に歯向かう骨のある官僚は排除されイエスマンばかりになったといいます。これでは各省庁の創意工夫が反映されないわけです。
しかし、国家元首としてのリーダーシップが特に必要なのは、やはり法律の制定や改正、国家間の取り決めや条約ではないでしょうか。そのなかでも重要なのは憲法9条の改正であるというのが私の考えです。消費税などは官僚からの強いプレッシャーで実現したとしても、憲法改正は首相が及び腰では絶対に実現しないと思います。
では、政治家でも軍事ジャーナリストでも法律家でもないただの小さな事業家である私が、なぜこのような主張をするのか。それは自由をこよなく愛する人間だからです。法律を守っていれば、誰にも制約を受けることがなく、なんでもできる。仕事も住む場所もすべて自分で選ぶことができる。他国のように外出禁止とか営業停止を強制されることもない。優秀な警察のおかげで治安も良く、安心してビジネスや生活ができる。
私は2011年3月の原発事故をきっかけに世界約20か国を巡り、『日本脱出』(あさ出版)という本を書いたほどですが、世界を見て一つの結論が出ました。日本は本当に自由で素晴らしい国です。だからそんな素晴らしい環境を守らなければならない。
しかし、もし国家が自国領土を守れないなら? それは国民を守れないこととイコール。国民を守れなければ人権侵害国家に蹂躙されるリスクがあります。
憲法9条改正は戦争国家になること?
9条を改正すれば日本は戦争をする国になるとか、自衛隊が危険にさらされると反対する人がいます。そもそも自衛隊員を守るために国民が犠牲になるとしたら、主従が逆転してしまいますが。
しかし私が最も忌むべきは戦争です。テロなども含みます。戦争ほど個人の人権・生存権を侵害する理不尽なことはないからです。第二次世界大戦の記録はいうに及ばず、現代でもシリアの内戦に関する報道を見ればわかりますが、何の罪もない普通に生活している国民が戦闘に巻き込まれ、命を落とします。家族と離散し、学校にも行けない、病院にも行けない、国外にも逃げられない(不法難民になるしかない)。女性は暴行を受け、子どもは飢える。職にも就けないし自己実現もできず夢も見られない。こんな不自由で不条理な状況はないでしょう。
だから私は、民主主義を礼賛します。そして、自国から他国を挑発をしてはいけないし、自国から争いを仕掛けてはいけないと考えています。同時に、他国から戦闘や戦争を仕掛けられたら国を守れる自衛隊であってほしいと思います。
それには「ちょっかいを出したら痛い目を見る」と相手に思わせることです。子どものいじめも、相手が「反撃してこない」という安心感があるからいじめることができるわけで、「コイツは何をしてくるかわからない」という恐怖感があればいじめっ子も手を出さないようなものです。しかし冒頭のミサイル発射の報道を聞くと、それが通用しない可能性もありますが、それほど中国は自国の軍事力に自信を持ち始めているということかもしれません。
憲法改正に反対している人は、戦後の憲法が制定された時代と今が、安全保障をめぐる環境が同じだと考えているのでしょうか。日本国憲法が制定された1946年当時、北朝鮮も中国も核兵器を持っていませんでした。朝鮮が南北に分断したのは1948年ですし、中華人民共和国が成立したのは1949年です。
それから約75年、尖閣諸島近辺で中国が挑発を繰り返しているのはご存知の通りですが、世界各国がコロナ対応に追われ、外交交渉も滞っている状況下で、中国は着々と覇権拡大の準備に邁進しています。たとえば軍事力が弱いフィリピンやベトナムも、南沙諸島や西沙諸島でいいようにやられています。フィリピン海軍もベトナム海軍も、中国海軍にはまったく歯が立たず、何もできず指をくわえて見ているしかないわけです。日本もこのままではいずれ尖閣諸島を奪われる可能性が高い。むろん米国とも危機感を共有しており、有事の際には共闘するとは思いますが。しかしそうやっていったん既成事実をつくられれば、さらに攻めてくる可能性があります。
韓国にはいったん突き放す勇気も必要
韓国に対しても、毅然とした対応を望みます。これも私の個人的見解ですが、貿易や取引など関係がある日本人・日本企業には申し訳ないですが、いったん行きつくところまで行かないと関係改善は難しいかなと思います。
願望を史実に置き換え間違った歴史で国民を洗脳し、若者さえ疑わず反日不買運動をする状況では、慰安婦問題も徴用工問題も永遠にくすぶり続け、政権が変わるたびに再び反日不買となって終わりがありません。これでは日本企業は安心して韓国に進出できないし、韓国企業との取引もできない。ずっと反日不買というカントリーリスクにさらされ続けることになる。こんな不毛な争いは、どこかで終わりにしないといけない。しかし韓国の歴史教育が歪んでいるために、つねに反日分子を養成する構造になっています。
そのため、日本政府は韓国政府を突き放したほうがいい。次のタイミングでは強力な制裁を連続して打ち出し(小技の報復の応酬では国際社会からは子ども同士の愚かなケンカに見えるため)、日本は本気であることを示すことです。韓国内ではこれまで以上に激しい反日不買運動が起こるでしょう。GSOMIAを破棄し駐日韓国大使を引き上げさせ、断交に踏み切るかもしれません。しかしそれは韓国側の反応であり、日本は騒がず見守るだけでいい。そうやって完全に膿を出し尽くす。
韓国内が冷静になるまで数年かかるかもしれません。しかしその後、韓国の知識人を中心に「いつまでもこのままじゃいけないよね」「やっぱ日本と協力しないといけないよね」という声が出てくる。その声が大きくなる。そうやって落ち着いてからでないと、彼らに歴史の事実を受け入れてもらうことはできないでしょう。
「本当に日本による統治は極悪非道だったの?」「本当に強制連行や強制徴用はあったの?」「本当に韓国は被害者だったの?」という声が大きくなることを待つしかない。あるいは「過去にこだわっていても仕方がない」「いったん水に流そう」という融和の流れが起きるまで待つしかない。そんなふうに思います。
中国が世界の番犬になる?
さて中国の脅威に戻りますが、一帯一路戦略に見られるように、強大な経済力と人的資源を背景に、世界の新興国が中国にのみこまれようとしています。実際、共産主義のほうが国家の指導者にとってのメリットは大きいという印象があります。中国は人権を無視したその権力をバックに新型コロナウイルスの封じ込めに成功しましたし、膨大な数の監視カメラによって犯罪は激減、顔認証での決済が進むなど、共産主義の強みやメリットを世界にアピールできています。
中国の支援を受けて経済力や技術力、治安維持といった国家体制の整備をしたいと考える国が増える可能性は捨てきれません。そして中国人民解放軍の目を見張る軍備の増強・充実ぶりには、米国にもかなりの脅威だと思います。
それで将来もし世界の警察を米国が降り、中国が世界の番犬になったら? 想像しただけで恐ろしいです。実際に今、中国は世界の情報通信インフラを掌握しようとしているような印象を受けます。中国人民解放軍のサイバー部隊は世界中の機密や技術情報のハッキングに余念がなく、そこで得た情報を中国企業に流し、技術力向上につなげているという見方もあります。フィリピンでも、中国企業の電力インフラ設備を導入していることで、中国がフィリピン国内の電力供給網をコントロールできるという話が話題になりました。
中国企業が開発・販売しているアプリや通信端末には、ハッキング用のバックドアがプログラムされていて、情報が筒抜けになるリスクも指摘されています。機密情報だけでなく、電気・ガスや電話やインターネットといったあらゆるインフラ設備・情報通信体制が中国企業に掌握されれば、情報戦で世界の国が敗北し、宇宙空間も軍事もすべて中国に支配されることになります。すると中国が世界の民主化の動きに牽制をかけ、共産化を推進するよう介入するかもしれない。
米国はチベット自治区や新疆ウイグル自治区、そして香港で行われている人権侵害に圧力をかけていますが、それは米国が世界の警察として民主化を支持しているからです。
特にチベット自治区や新彊ウイグル自治区では、中国人との強制結婚や独自言語の使用禁止、宗教や言論の弾圧に強制収容など、おぞましい人権侵害行為が行われています。
しかし中国が世界の覇権を握れば、米国とは逆に他国の人権侵害を支援し、民主化に圧力をかけるようになるかもしれない。米CIAは他国の独裁政権の転覆や暗殺といった工作活動をしていますが、将来は中国の国家安全部が他国の民主政権の反体制派を支援して共産政権樹立の工作をするようになる可能性もある。
というのはかなり妄想がかっており、これは極端だとしても、だからこそ米国は本気で中国潰しを仕掛けているのだろうと私は推測しています。むろん国を守る方法は、日本が他国に貢献し、世界の国から「お得意様」になることでも可能でしょう。自分の国の商品を買ってくれるお得意様に攻め込もうという国は少ないからです。そういう意味でも安倍首相はTPP交渉などでも存在感を示しており、これも外交の大きな成果のひとつです。
しかし経済と政治とは切り離し、攻めようとする国もある。だから一刻も早く、自国を守れる体制を構築してほしいと切に願います。
以上、自由と民主主義を愛する一国民の駄文でした。
(文=午堂登紀雄/米国公認会計士、エデュビジョン代表取締役)