1月20日に開会した通常国会の最大の焦点は、安倍政権が上程・成立を狙う共謀罪(テロ等準備罪)である。1月10日、共同通信社の取材に対して安倍晋三首相は「テロ等準備罪(共謀罪)を成立させないと国際条約を締結できない。2020年の東京オリンピック開催にも支障がある」との趣旨の発言をしたことから、にわかに注目されるようになった。
しかし、法案のポイントはテロ防止ではなく、テロ「等」ではないかと野党からさっそく追及を受けている。政府を批判する言論や活動を「等」に入れるのは、いとも簡単だからである。
拡大解釈自由自在の「テロ等準備罪」は、国民を弾圧するために際限なく警察が拡大解釈し、結局は国を滅ぼした戦前・戦中の治安維持法並みの危険な法案として、過去に3回廃案になった共謀罪そのものだ。
「テロ防止」と名前を変えれば賛成するだろうと、国民を見下した発想といわれてもしかたないだろう。
安倍首相が言う国際条約とは、国際組織犯罪防止条約(パレルモ条約)のことで、マフィアなどの国境を越える組織犯罪を防ぐための条約。その中身はマネーロンダリング(資金洗浄)防止などの経済犯をメインにしており、テロ対策ではない。
ただ、条約批准のためには、共謀罪か参加罪が整備されていることが必要とされているのは事実だ。共謀罪とは、犯罪を実行しなくても計画したり合意したりすれば犯罪が成立するもの。参加罪は、犯罪組織と知りながらそれに加入することだ。
「黙示の行動でイロイロすることで」共謀罪成立?
共謀罪では、頭の中で考えたり、心に浮かんだことを話しただけで罪にされかねない。話さなくても黙示(暗黙の了解、あうんの呼吸など)で犯罪が成立する可能性もあると、過去の法務省答弁では明らかになっている。つまり、客観的証拠もなく、人は罪に陥れられる可能性がある。
過去にもっとも反対運動が活発だった06年の国会答弁で法務省の大林宏刑事局長(当時)は、当時の保坂展人衆院議員(現・東京世田谷区長)の質問に「まばたきや、うなずくという行為でも成立する」と驚愕の答弁をしたのだ。
そればかりか「『黙示の行動』でイロイロすることで共謀罪が成立することは、ありえなくはない」とも述べている。
「黙示の行動でイロイロすること」は、まばたきも含めてなんでもあり、ということを示す。犯罪が成立するか否かを第一義的に判断するのは警察や検察だから、客観的な証拠がなくても、特定の人物を逮捕しようと思えば、100パーセント逮捕可能である。
テロ等とお題目を唱えても本質は、うなずいただけで罪になる共謀罪そのものなのだ。