そもそも、対象犯罪の数を減らしても、「犯罪を実行していなくても、話し合ったと警察に認定されれば処罰される」という本質に変わりはなく、たったひとつでも許してはならない。
数を少なくすれば安心だという世論誘導に対抗することも、今後のポイントとなるだろう。
同席した真山議員は、まず昨年の国会で成立した「刑事訴訟法等の一部を改正する法律」と、今度上程される予定の新共謀罪が連動する恐れを指摘した。
「昨年の刑事訴訟法等の一部を改正する法律では、通信傍受法(盗聴法)は、限定されていた対象を一般犯罪にも大きく拡大されてしまった。しかも、従来は立会人のもとで通信傍受していたものを、立会人なしで可能とされた。だから警察署でいつでも盗聴できる」(真山議員)
すでに大幅に対象を拡大した盗聴法が、何百もの罪につける新共謀罪に適用されたら大変になるとの指摘だ。
もうひとつ、司法取引が昨年の刑訴法等の一部の「改正」で導入されたことで、自首して密告すれば自分の罪が減じられることから、密告による冤罪が増える可能性もある。
ニュースキャスター出身の真山議員は、テレビの特性をとらえて次のような懸念を示した。
「共謀罪という法律問題をひもといて視聴者にテレビで伝えるのは難しい。それよりも、夏の東京都議会選挙が近づくにつれて“小池劇場”に飛びつき、共謀罪のことが報道されなくなるおそれがある」
通常通りならば、2月末までに予算審議を終え、新共謀罪が上程されるのは3月以降だ。上程されて法案の問題点がつぎつぎに明るみに出る時期に、都議選がらみで“小池劇場”をテレビが演出したら、人権の根幹を揺るがす共謀罪のニュースが相対的に少なくなる可能性がある。
それならば、心ある市民がインターネットなどを使い、「小池劇場より共謀罪」のキャンペーンを行うしかないだろう。
勉強会の締めくくりとして足立氏は、「専門家などの講師を招くだけが集会や勉強会ではない。10人くらいが集まって、本を題材に話し合ったり意見交換する集まりを全国各地で実行し、世論喚起しようではないか」と提案した。
藤沢で行われたミニ集会からは、次のような点を社会に伝えることが大切だとわかった。
(1)共謀より怖い「合意」
(2)「数を減らせば安心」は嘘
(3)小池劇場より共謀罪
(4)10人勉強会を日本中にひろめる。
何よりも、世界でもっともテロの可能性が低い日本において、権力者へ「内心を罰する全権」を与えるのは、国民市民に対するテロそのものではないか。「テロより怖い共謀罪」として社会に伝えていく必要があるだろう。
(文=林克明/ジャーナリスト)