「“150万円のおごり”を、いじめや恐喝と認定できなかったのは、加害児童たちが被害児童からお金をもらったのか、お金を取ったのか、被害児童のことを脅したのかといった事実関係が曖昧だったからです。今回の事件で第三者委員会は、児童たちに直接聞き取りをせず、学校の先生が聞き取りをして作成した書類だけを見て判断しています。
そもそも、いじめというものは隠されてしまいがちですし、加害児童たちに話を聞いたとしても、素直に認めることは滅多にありません。今回の報告書には、誰がどのようなかたちで児童たちに聞き取りしたかまでは詳しく書かれておらず、あまり計画的な方法ではなかったと思われます。おそらく、クラスの担任もしくは管理職が聞き取りをしたのではないかと思いますが、本来は、担任ではなく学校のいじめ対策チームが対応するべきです」(武田氏)
2013年9月に「いじめ防止対策推進法」が施行されて以降は、各学校にいじめ対策チームが設置されているというが、今回のケースではこのいじめ対策チームがなぜか機能していなかった可能性が高い。
「学校の先生は、自分のクラスや学校で犯罪的な事件が起こり、それを自分が見逃していたとなれば、当然、責任を問われてしまいます。そのため、知られてまずい事実が出てくるような聞き取りの仕方はせず、仮に児童が真実を語っていたとしても、『それって本当に君がやったの?』『ほかの子はこう言っているよ』などと追及し、答えを誘導することさえあり得ます。
学校でいじめが起きたときのセオリーは、加害児童への聞き取りを最後に回すことです。まず、まわりから情報を集め、言い逃れができないようにしておいてから、複数人数で一斉に聞き取りをする。そうでないと、児童たちが口裏合わせをしてしまったり、事実を十分に引き出せなかったりするからです」(同)
これに加え、問題点として挙げられるのは、児童たちへのアンケート調査が実施されなかったことだという。
「聞き取り調査の書類は先生が作成しますので、児童が口にしていないことでもいくらだって書けますし、逆に児童の言ったことを書かないことも可能でしょう。それに、こうした調査が入ることはどこの学校もわかっているため、多くの場合、聞き取り時のメモは廃棄処分してしまいます。報告書は結局、管理職の目から見て問題のないようなかたちでまとめられてしまうわけです。
一方、アンケート調査は児童自身が記入しますから、大人が改ざんするのは難しいですね。実際、聞き取り調査をする前にアンケートを取ってみると、いじめへの関与が少ない児童のほうが、いじめの事実をより詳しく書いてくれます。自分には責任がないということもありますし、今まで黙っていたことへの罪悪感もあるからでしょう。