東京電力福島第1原子力発電所の事故で福島県から神奈川県横浜市に自主避難した児童がいじめを受けた問題で、横浜市教育委員会の岡田優子教育長は2月13日、生徒と同級生との金銭のやりとりについて「いじめの一部として認識し、再発防止を検討する」とのコメントを発表した。
被害児童は、転校先の小学校で「○○菌」と呼ばれるなどのいじめを受けたという。加害側とされる児童(以下、加害児童と表記)たちから「賠償金あるだろ」と脅されたことから、約150万円という多額な遊興費を負担したと伝えられている。
そして、第三者委員会(横浜市いじめ問題専門委員会)が“重大事態”として調査にあたったことがニュースなどで報じられ、全国的に話題になった。
だが、加害児童たちの証言によれば、これは恐喝ではなく、被害児童が自主的に“おごった”というのだ。昨年まとめられた第三者委員会の報告書では、「おごりおごられ行為そのものについては『いじめ』と断定することはできないが、当該児童の行動(おごり)の要因に『いじめ』が存在したことは認められる」と煮え切らない結論に至った。
さらに、岡田氏が1月、市議会で金銭要求について、「かかわったとされる子どもたちが『おごってもらった』と言っている以上、いじめという結論を導くのは疑問がある」と述べた。
この発言に対して「加害者側が『おごってもらった』と言えば『いじめ』ではなくなるのか」「じゃあ『いじめ』ってなんですか?」といった批判が殺到。被害児童側が発言の撤回を求めたのはもちろん、「横浜いじめ放置に抗議する市民の会」も2000人近くの署名を集めた。その後、岡田氏は謝罪するに至った。
第三者委員会は聞き取りもアンケート調査も未実施?
そもそも、小学生の間で150万円もの大金が授受されている時点で“異常事態”であることは火を見るよりも明らかであり、いじめや恐喝だと認定しなかった横浜市教委や第三者委員会の姿勢に世間が憤りの声をあげたのは、ある意味当然といえる。
こうした対応の背景には、どのような事情があるのか。教育評論家の武田さち子氏は、「初動調査の不備がそのまま尾を引いてしまった結果でしょう」との見解を示す。