そこで、音楽教育を守る会・事務局に話を聞いた。
「JASRACさんは、『音楽教室で音楽を使っているのだから払ってください』と、ただそれだけです。我々の主張は、音楽教室での演奏は著作権法22条に定める、『聞かせることを目的』とした演奏ではないということです。演奏技術の習得のために弾いているのだから、普通に解釈するとそうですよね。音楽教室で発表会をやることがありますが、その場合は、聞かせるための演奏ですから、著作権料をお支払いしています」
JASRAC理事の玉井克哉・東京大学教授が「音楽教室はJASRACに一銭も払っていない」とツイートした後、誤りを指摘されてそれを削除したが、演奏会など公衆に聞かせる目的の場合には著作権料は支払っているという。
「発表会での演奏もそうですし、テキストやCDについても、著作権料は支払っています」(同)
JASRACからの監査があるが、その評価はヤマハ音楽振興会は100点満点だったという。
「世の中ではJASRACを悪者と捉える方も多いようですが、私たちはそうは思っていません。作者の権利を守っていただける存在として、リスペクトしています。音楽教室からは演奏家、作曲家、編曲家などが育っていますが、そういう方の権利を守っていただいている団体だと認識しています。ただ、今回の件だけは、法律的な解釈などの面から賛成できないのです」(同)
JASRAC側は、今回いきなり言い出したことではなく、2003年から継続して交渉を行ってきたと主張している。
「話し合いは断続的で、3カ月に1度くらい定期的に協議するようになったのは、ここ2年くらいです。明治32年につくられた著作権法は、1970年に全面改正されています。音楽教室から徴収するというのなら、その時にそういう規定になっていたはずです。ヤマハ音楽教室は1954年からありますし、ピアノ教室というのはその前からあったはずです」
玉井氏は「大手の楽器メーカーが音楽教室を全国展開していてなおかつ一銭も払わないのが、特異なのです。そういう国はおそらく日本だけでしょう」ともツイートしているが、実際に海外ではどうなのか。
「我々が調べたところ、海外展開しているヤマハ音楽教室で、レッスンでの使用で著作権料を支払っているということはありませんでした。もちろん、発表会やテキスト、CDについて支払っているというのは日本国内と同じです」(同)