浜崎あゆみや安室奈美恵、EXILEなどのアーティストを抱えるエイベックス・グループ・ホールディングス(以下、エイベックス)が、JASRACに委託していた約10万曲の楽曲管理を、系列会社のイーライセンスに移すことが明らかになった。
JASRACは、放送局やレコード会社をはじめ、カラオケ店、飲食店などから著作物の使用料を徴収、著作権者に分配する業務をほぼ独占している。放送の場合は放送事業収入の1.5%、CDの場合は税抜き価格の6%を受け取ることで、JASRACの管理楽曲を自由に使用できる権利を与える「包括徴収方式」を採用している。
しかし、著作権管理がJASRACの独占状態にあることで、放送局やレコード会社との立場は対等であるとはいえず、「音楽業界の活性化を妨げている」という指摘があるのも事実だ。
今年4月には、最高裁判所がJASRACと放送局などとの契約方式について「他業者の参入を妨げており、独占禁止法違反の疑いがある」「市場支配力の維持や強化のため、正常な競争手段を超えて、包括徴収方式での事業を行った」という判断を示していた。
上智大学文学部新聞学科教授(メディア論)の碓井広義氏は、音楽市場における著作権管理について、以下のように語る。
「音楽産業におけるJASRACのこれまでの“功績”は、ひとまず置いておきますが、基本的にJASRACは音楽の利用方法ごとに均一料金的かつ非差別的に利用許可を与えてきました。しかし、創作者や音楽事業者が、そこから生まれる利益も含めて『楽曲というオリジナルコンテンツが持つ価値をより高めよう』と思った時、JASRACが独占していることによって阻まれてしまいます。実質的に、JASRAC以外の著作権等管理事業者が存在しないからです。
著作権の重要な機能のひとつに、創作者および創作者を支える人たちの収入を確保することがあります。著作権管理事業で約99%の圧倒的シェアを持っているJASRACですが、その集中管理が創作者のビジネスにとって本当に有効かという視点で見ると、現状を見直す動きが起き始めたのは、当然の流れかもしれません。メディア環境の変化により、CD市場はかつてのように大きな利益を生まなくなりました。今回の問題の背景には、音楽事業者の今後の生き残りを賭けた戦略があると思います」