世界遺産・富士山を抱え、お茶の産地としても有名な静岡県。県内に熱海、三島、新富士、静岡、掛川、浜松と新幹線の駅が6つあり、東京へも名古屋へも1時間ほどで行くことができる。2009年には富士山静岡空港が開港した。地理的には申し分ない土地柄であるが、ちょっとした異変が起きている。
政令指定都市で静岡県庁所在地でもある静岡市の推計人口(4月1日現在)が70万人を割り込み、69万9421人になったというのだ。静岡市が政令市に移行したのは05年4月。当時は市町村合併を支援するため政令市の人口要件が100万人から70万人に緩和されていた。この緩和措置のおかげで政令市になったものの、進学や就職で首都圏などに転出する若者が多く、18歳から22歳の人口減が目立つという。
静岡市の人口の推移を見てみよう。静岡市は03年4月に旧静岡市と旧清水市が合併し、05年4月に政令市となった。当時の人口は70万980人。以降、09年に71万7207人まで増加したものの、その後は漸減傾向にある。13年に70万9561人と71万人台を割り込み、今年ついに70万人台を割り込んでしまった(いずれも国勢調査の結果を基に算出している推計人口で、毎年4月の数値)。現在、全国に20ある政令市で人口は最下位。ジリ貧傾向から抜け出せないのが現状だ。
「2025年に総人口70万人を維持」が目標
人口減少という事態に直面し静岡市は15年10月、「オール静岡で人口減少問題に取り組む」との決意のもと、「静岡市人口ビジョン」と「静岡市総合戦略」を策定し、具体策に取り組んでいる。
「人口ビジョン」を見ると、静岡市は国・県よりも20年早い1990年の73万9300人(静岡市域における旧市町村の合計人口)をピークに人口減少に転じた。国立社会保障・人口問題研究所の推計では、25年には65万2514人、40年には55万8931人となるという数字を紹介。「あらゆる手立てを講じる必要がある」としている。
総人口の減少だけでなく人口構造の変化にも着目。生産年齢人口は90年の51万9833人をピークに減少し、10年には44万7624人となった。一方、老年人口は90年の8万6043人(人口に占める老年人口の割合は11.6%)が05年には15万人を超え、20年には20万8676人(同30.7%)と増加していくとしている。
人口減の要因として、大学進学や就職に伴う18歳から22歳までの若者の流出が目立つこと、主な転出先が東京都、神奈川県、愛知県であると指摘している。
この「人口ビジョン」を受けて策定された「総合戦略」では、「まちの存在感を高め、交流人口を増やす」「ひとを育て、まちを活性化する」「しごとを産み出し、雇用を増やす」「移住者を呼び込み、定住を促進する」「女性・若者の活躍を支え、子育ての希望をかなえる」「時代にあったまちをつくり、圏域の連携を深める」といった6つの基本目標、重点事業を掲げ、「2025年に総人口70万人を維持」との人口目標を掲げている。