現在、市は県外の大学へ進学した学生を対象に、新幹線定期代の一部(上限1カ月3万円)を補助するという対策を昨年4月から実施中だ。卒業後、返還期間(貸与期間の2倍)に相当する期間、市に居住し市民税の所得割を完納した場合、返還は免除される。市によると昨年度の申請者は178人、今年度は4月下旬時点で71件の申請があった。卒業後の地元就職が狙いだという。
また、東京・有楽町の交通会館内に静岡市移住支援センターを開設し、移住希望者の相談に乗ったりセミナーを開催したりしている。
人口減少問題は、一朝一夕に解決する問題ではない。若者にとって、いかに魅力ある街にしていくか。また、住みやすい街、働きやすい街にしていくか。目に見えるかたちでの成果が表れるのは、まだ先になりそうだ。
全国に20ある政令市の人口推移をチェック
全国には現在、政令指定都市が20ある。歴史的に見ると大阪市、名古屋市、京都市、横浜市、神戸市の5市が1956年に政令第254号で指定された。以降、北九州市、札幌市、川崎市、福岡市、広島市、仙台市までが昭和時代の指定。平成になって千葉市、さいたま市、静岡市、堺市、新潟市、浜松市、岡山市、相模原市、熊本市と続いた。
直近の国勢調査(15年)による20都市の人口(確定値)と5年前調査の人口を比較してみた。結果は次の通りである。
※以下、市名 15年の人口(10年からの増減数)
大阪市 269万1185人(+2万5871人)
名古屋市 229万5638人(+3万1744人)
京都市 147万5183人(+1168人)
横浜市 372万4844人(+3万6071人)
神戸市 153万7272人(-6928人)
北九州市 96万1286人(-1万5560人)
札幌市 195万2356人(+3万8811人)
川崎市 147万5213人(+4万9701人)
福岡市 153万8681人(+7万4938人)
広島市 119万4034人(+2万191人)
仙台市 108万2159人(+3万6173人)
千葉市 97万1882人(+1万0133人)
さいたま市 126万3979人(+4万1545人)
静岡市 70万4989人(-1万1208人)
堺市 83万9310人(-2656人)
新潟市 81万157人(-1744人)
浜松市 79万7980人(-2886人)
岡山市 71万9474人(+9890人)
相模原市 72万0780人(+3265人)
熊本市 74万0822人(+6348人)
増加が14市、減少が6市となっている。このうち福岡、川崎、さいたま、札幌、仙台、横浜、名古屋、大阪、広島の9市は全国の人口増加都市ランキングのトップ10に入った。ちなみにトップは東京都特別区部。逆に、北九州市は全国の人口減少ランキングのワースト1位、静岡市は10位となっている。同じ政令市でも、人口の増減で見る限り明暗はくっきり分かれる。
もちろん、人口が増加したからといって、待機児童の問題や住宅問題など政策課題は多く、喜んでばかりはいられない。
深刻なのは、合併で政令市になったものの、人口減少と高齢化がセットで続く自治体だろう。新たな産業が育たず、雇用も増えない。税収が減り行政サービスが低下すれば、さらなる人口流出につながっていく。少子化対策、若者定着化対策、移住者受け入れ対策など、今後の課題は山積みだ。
(文=山田稔/ジャーナリスト)