6月2日付記事『韓国民団「財閥改革のハードルは韓国人若者の大企業指向」「北朝鮮問題の最大の被害者」』では、韓国の文在寅(ムン・ジェイン)政権のゆくえについて、在日韓国人のための組織「在日本大韓民国民団」中央本部副団長の林三鎬(イム・サムホ)氏の話をお伝えした。
文大統領が掲げる「財閥改革」の前途は厳しいが、韓国では「中小企業の育成=豊かな中間層の形成」が急務である。また、北朝鮮のミサイル発射は在日韓国人にとっては迷惑以外の何物でもなく、文大統領の親北政策も現実的ではないという。
今回は、従軍慰安婦問題における「日韓合意」や今後の日韓関係について、引き続き林氏の話をお伝えする。
日韓合意履行で韓国国内の少女像は撤去すべき
――日韓関係についてうかがいます。慰安婦問題については、2015年12月に日韓合意によって「最終的かつ不可逆的に解決」がなされました。しかし、慰安婦をモチーフとした少女像は、依然としてソウルの日本大使館や釜山の日本総領事館の前に設置されています。さらに、文大統領は日韓合意の再協議を主張しています。
林三鎬氏(以下、林) 民団の立場としては、呉公太(オ・ゴンテ)団長が「日韓合意は誠実に履行すべき」と表明しましたが、私もその通りだと思います。
歴史問題は、それぞれの時代によって認識や解釈が異なります。朴槿恵(パク・クネ)前大統領も安倍晋三首相も、お互いに知恵を絞り譲歩した経緯があるため、日韓合意は履行すべきです。合意書には、さまざまな問題がありますが、あまり歴史的な認識に立って一喜一憂すべきではありません。
日本側とすれば、国際法に違反するようなかたちで少女像が設置されたことについて、「解決を図ってほしい」と提起するのは当然のことです。撤去すべきだと思います。慰安婦を歴史の記憶としてとどめておきたいのであれば、像の設置ではなく、記念館や博物館を建設すれば済む話です。
一方、韓国側から見ると、元慰安婦の方々はもう90歳を超えています。なかには「お金は受け取らない」という方もいますが、生きている間に心からの謝罪やいくばくかの補償金をほしいと願うのも当然のことです。
実は、私は「外国籍元BC級戦犯問題の早期立法解決問題」に携わっているのですが、朝鮮出身だったBC級戦犯の関係者も、今や3名しかいません。その方々も90歳を超えています。なかには、死刑執行や抑留された方もいます。
当時は日本人でしたが、軍に強制的に従事させられたのに日本国籍を放棄したことで補償が何もないというのでは、あまりにも悲しい。今、議員立法による救済措置の動きがあります。当時の恨みもありますが、やはり同様に死ぬ前に政府から「申し訳なかった」という一言がほしいですし、いくばくかの補償金もいただきたい。そういう思いがあるのは、きわめて普通のことです。その方々は、法案が可決するのを一日千秋の思いで待っているのです。私は、歴史認識よりも現実的な解決を優先する場合も、時としてあっていいと思います。
今後、文大統領と安倍首相はシャトル外交を行うことになるでしょう。日韓合意は履行した上で、お互いに言いたいことがあれば言えばいいのだと思います。たとえば、安倍首相がソウルを訪問した際は、元慰安婦の方々に謝罪の言葉を述べるのもいいと思います。
「日韓基本条約」(日本国と大韓民国との間の基本関係に関する条約)締結後も、新たな事実が出てきた場合は再度検討して、そのたびに日韓間で合意を形成してきました。「外国籍元BC級戦犯問題の早期立法解決問題」も同じです。