在日コリアンの日韓二重国籍を認めてほしい
――グローバル時代の日韓関係においては、一方で日中韓FTA(自由貿易協定)構想が3カ国で話し合われることで、経済的には密接な関係を築いています。両国の往来も盛んですが、この点についてはどう見ていますか。
林 グローバル時代において、貿易関係を活発にするのは当然の流れです。お互いに技術を研鑽して強みを生かしてほしい、というのが韓国に対する思いです。しかし、以前に韓米FTAが締結された際に「ろうそくデモ」による抵抗が起こったように、グローバリズムを不安視する韓国人も少なくありません。日中韓FTAも、実現すれば同様に「ろうそくデモ」が頻発する可能性が拭いきれません。
しかし、韓国は世界市場という荒波に打って出て勝負すべきです。特権的な両班(ヤンバン)【※1】意識を変革し、リスクや技術的な格差はありつつも、韓国は日本とより密接に交流して、改善すべきところは改善すべきです。貿易の幅を広げることは、韓国にとって変わるための大きなチャンスです。日韓関係はウィン・ウィンでますますよくなってほしいと願っています。
――「日韓間の国の壁は、より低くなっていってほしい」ということですか?
林 私どもは在日コリアンですから、日韓の壁を取り去っていくことが目標です。私どもの子どもも、日本人と結婚したり日本国籍を取得したりしています。在日コリアンの子どもは、22歳までは日本と韓国の両方の国籍を持っています。民団としては、日韓の往来をより自由にし、架け橋となるためには日韓の二重国籍を認めてほしいという願いがあります。
今後、在日コリアンの生き方は多様化すると思いますが、今は模索している状況です。そういう時代だからこそ、日本人であり韓国人でもあるという生き方はおもしろみも生きがいもあり、日韓の架け橋になれると考えています。
民団は、韓国国籍のみを参加条件とする国籍条項を撤廃し、在日コリアンだけではなく韓半島(朝鮮半島)にルーツを持つ方であればウェルカムです。そのため、なかには日本国籍を取得した方もおり、ニューカマーの在日コリアンや事情があって中国から来られた朝鮮族も約8万人いるとされています。それら韓半島にルーツを持つ方々を統合し、一緒になって活動してほしいと願っています。
そんななかで、自民党の河村建夫衆議院議員が会長を務める日韓親善協会中央会が日韓関係に積極的なことは、大変うれしく思います。河村会長は民団に対して特に親近感を持っています。日韓国交正常化50周年を記念して、2015年にソウルで記念式典を行いましたが、当時の冷え切った日韓関係の間で奔走され、多くの方々が参集したのは河村会長の努力のおかげにほかなりません。当日、朴前大統領と安倍首相のビデオメッセージが流れましたが、今後も日韓親善協会中央会とはいい関係をつくっていきたいと考えています。
民団としての活動は、韓半島の統一や同胞の生活安定もありますが、重要な課題は日韓関係の橋渡しであり、今努力しています。