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死亡事故の7割…高齢者“自転車運転者”のマナーが危険すぎる!取り返しつかない事故

文=林美保子/フリーライター
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「Getty Images」より

 近年、高齢ドライバーによる交通事故が頻発している。この場合、高齢者の身体能力や認知機能などの低下が原因ではないかといわれている。では免許証を返納して自転車に乗り換えれば安心かというと、実はそうでもない。取材活動のなかで、高齢者の自転車利用者に眉をひそめる人の話を幾度となく聞くことがあるからだ。

若いドライバーの心配は、傍若無人な高齢者の自転車とぶつかりかねないこと

 私が住むマンションでは、「廊下は自転車から降りて歩くように」という注意書きが掲示板に貼られているにもかかわらず、男子高校生がペダルを漕いで、我が家の前を通り過ぎて行くのを見かける。夫が注意しても、どこ吹く風だ。このように、公衆道徳を守らないのは若者というイメージがあるが、「年代は関係ない。高齢者が結構多い」とAさんは語る。

 Aさんが住む近所には、道幅が狭いために自転車通行が禁止されている坂があるのだが、「自転車から降りるように」と、Aさんが注意してもなかなか聞く耳を持ってもらえないという。

「70代のジイさん、バアさんがバンバン飛ばす。電動自転車がスピードを出して坂を上る。感心するくらい元気だねえ」と、Aさんは苦笑する。Bさんが住むあたりでは、80代の自転車利用者は当たり前、なかには90代の人もいるという。

「どうにかしてほしいのは、高齢者の交通マナーが悪いことです。もう、めちゃくちゃですよ」

 逆走、夜間の無点灯走行、傘を差しながらの運転、信号無視、突然の飛び出しなど……。車を運転していると、危ない場面に遭遇することが少なくない。実際に、車と自転車の衝突事故を見たこともある。

 車を運転する機会の多いBさんが気がかりなのは、自転車とぶつかるようなことがあったら、最悪の場合、自転車に乗っている人が亡くなる可能性があるということだ。

「そうなると、たとえ相手が逆走していても、こちらの責任になりかねません」

 高齢者ドライバーによる自動車事故は高齢者が加害者になる場合が多いのだが、自転車利用者による事故は高齢者の死亡率が高い。警察庁によると、2019年に自転車に乗っていて亡くなった65歳以上の高齢者は297人、全体の約7割を占めた。年代別では80歳以上が31%と最も多く、次に多いのが70~79歳が29%だった。

 高齢者の死亡者のうち、法令違反があったのは79%にも上り、本人が事故原因を引き起こしていたことがわかる。一番多い原因は操作ミスや安全確認義務違反だった。

 また、自転車の安全利用促進委員会によると、自転車による転倒事故の約半数が高齢者によるものだという(2015年調べ)。

本人も気づかない身体能力、認知能力の低下

「たぶん、老若男女関係なく、自転車に乗る人の9割くらいは道路交通法に違反しているのではないかと思います」とBさんは語る。

「でも、若いうちは視野が広くて運動能力もあるから、咄嗟の対処もできる。高校生も危ない走りをしていることがあるけれども、彼らの場合には行動が読める。でも、高齢者だと、よくわからないんです。急に横切ったりして何をするかわからないのです」

 私は以前、高齢者の視野がどれほど狭いか、テレビのニュース番組で見たことがある。それは、普通に見えている者からすれば驚くほどの視野狭窄だった。しかし、高齢者自身はそのことには気づいておらず、「突然、車が横切った」などと感じてしまうのだという。

 また、これは専門家から聞いた話ではあるが、高齢者は空間認知をする能力も低下するという。「これくらいの空間があるから自分は通れるかな」と、若い人なら普通にわかることでも、年をとると、狭いところに入って行こうとしてぶつかったり、広いのに、「ぶつかったらどうしよう」と思ったりする。高齢者が車庫入れなどで擦るのも車幅感覚が衰えてきているからだ。このような低下は車の運転に限らず、自転車に乗っているときにも関係してくるので、注意が必要だ。

 私自身、45歳のときに反射能力の衰えを感じたことがある。自転車に乗って横断歩道を渡ろうとしたとき、車がスピードを落とさずに左折してきて間一髪でぶつかりそうになった。それまでの私だったら、「あっ!」と思ったら瞬時にブレーキハンドルを押すことができたのだが、そのときは、「あー、ぶつかる!」と思ったのに、ブレーキハンドルを持つ手が反応しなかった。幸い、ぎりぎりのところで車が止まったので大事には至らなかったのだが、45歳は早すぎるのではないかと自嘲しつつも、老化というものを実感したのだった。

「自転車を利用する高齢者=元気」ではない

 高齢者が自転車に乗っていると、「元気だなあ」と思いがちだ。しかし、Cさんは言う。

「夫を見て思ったのは、元気というよりは歩くのが大変だからだと思います。自転車のほうがラクなんですよ。だから、どこに行くにも自転車に乗っていましたね」

 Dさんも語る。

「高齢になると、犬の散歩ができなくなるんです。犬のほうが元気ですから、ついて行けない。だから、犬をカゴに入れて自転車に乗っている人がいますよ」

 自転車におけるルールがあまり徹底されていないという点もあるのではないか。私は東京に住むようになったとき、「へえ、東京では自転車は歩道を走るものなのか」と思った。地方では、自転車は車道を走るのがあたりまえだったからだ。「東京は交通量が多いから、地方とは違う決まりになっているのだな」と思った。

 ところが、首都圏でも自転車は車道で走るのが原則であることを知ったのは、恥ずかしながら、何十年も後になってからのことだ。それまでは、歩道で走るのが正しいと勘違いしながら、平然と乗っていたのだ。

 自転車は誰でも自由に購入することができて、その際、注意書きのパンフレットひとつもらうこともない。高齢者は機能低下を自覚して迷惑をかけないような乗り方を心がける、若者は高齢者が元気だから自転車に乗っているわけではないことを理解する、そして、何よりも自転車のルールをもっと徹底する仕組みづくりが必要なのではないだろうか。

(文=林美保子/フリーライター)

林美保子/ノンフィクションライター

林美保子/ノンフィクションライター

1955年北海道出身、青山学院大学法学部卒。会社員、編集プロダクション勤務等を経て、執筆活動を開始。主に高齢者・貧困・DVなど社会問題をテーマに取り組む。著書に『ルポ 難民化する老人たち』(イースト・プレス)、『ルポ 不機嫌な老人たち』(同)、『DV後遺症に苦しむ母と子どもたち』(さくら舎)。

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