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荻原博子「家庭のお金のホントとウソ」

変額個人年金は入ってはいけない?運用損で原資2割減→強制的に運用停止の例も

文=荻原博子/経済ジャーナリスト

 株が上がりもせず下がりもせず、為替もピッタリ動かないままであれば、「25年たっても、1000万円は1000万円だろう」と思うかもしれません。しかし、そうした状況が続けば、25年後には1000万円が半分の約500万円になってしまうのです。

 なぜ、そんなことが起きるのでしょうか。運用がどんな状況であろうと、保険商品である以上は、必ず死亡保障など掛け捨ての保障料を支払わなくてはなりません。さらに、保険会社にも保険の運用経費や投資信託の信託報酬などを払い続けなくてはならないからです。それらを25年間払い続けると、なんと半額になってしまうのです(実際には、後述するように途中で売り止めになります)。

 変額個人年金は、このランニングコストが高いものが多いのです。たとえば、以前に郵便局で販売していた変額個人年金の場合、加入する時点で契約時費用として4%の手数料を支払い、さらに、加入し続けている間は積立金に対して保険関係費用年1.4725%、運用関係費用年0.486%、純保険料年1%を引かれました。この3つを合計すると、保険運用中に約3%が手数料として引かれていくことになります。

 つまり、支払った1000万円から契約時の費用としてまず40万円が引かれ、さらに、そこから毎年約3%の手数料が引かれ続けるという状況が25年続くわけです。その結果、預けた1000万円は25年後には約500万円になってしまいます。

 もちろん、これだけの手数料を払っていても、25年間ずっと5~6%の利回りで運用できれば、元本は増えるので問題ありません。しかし、世界的な低金利のなかで、その利回りを維持して運用していくというのは、まず難しいのではないでしょうか。

運用損で募集停止になる変額個人年金も

 変額個人年金は減る可能性もありますが、前述のように預けたお金が500万円まで減るということはありません。なぜなら、年金である以上は、老後までにあまりに大幅な運用損が出ると、老後の資金計画が狂ってしまうからです。また、損をしたということで多数の解約が出ても、将来の運用に響きます。

 そこで、損失がある程度までいくと、運用を停止する「売り止め」(募集停止)や「休止」という状況になります。

 09年、日本の変額個人年金の元祖であるハートフォード生命保険が新規販売を停止しました。ハートフォード生命の商品では、あらかじめ「年金の原資が80%以下になると、特別勘定による運用は終了して一般勘定に自動移行することにより、年金支払総額で一時払い保険料相当額を保証する」と決められていました。そこで、80%以下になってしまったので運用が続けられなくなったのです。

荻原博子/経済ジャーナリスト

荻原博子/経済ジャーナリスト

大学卒業後、経済事務所勤務を経て独立。家計経済のパイオニアとして、経済の仕組みを生活に根ざして平易に解説して活躍中。著書多数。

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