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午堂登紀雄「Drivin’ Your Life」

賃貸住宅、これだけのメリット…住宅ローン地獄も無縁、移動自由で設備修繕はタダ

文=午堂登紀雄/米国公認会計士、エデュビジョン代表取締役
賃貸住宅、これだけのメリット…住宅ローン地獄も無縁、移動自由で設備修繕はタダの画像1「Thinkstock」より

 以前に本連載記事でも書いたとおり、私は現在「家は買ったほうがいい」という判断をし、実際にそうしました。

 しかしそれは、結婚して子どももできて家族構成がほぼ固まったことと、夫婦ともに自営業なので、転職や転勤などで転居を迫られる可能性も低いという理由があってのことです。個人的には数年ごとに新しい街に住むことが好きで、実際に学生時代から数えても10回以上の引っ越しを経験しています。

 ただ、独身ならともかく、世帯での引っ越しは荷物も多く、住所変更しなければならないものもたくさんあり、肉体的にも精神的にも時間的にも大変ですので、しばらくは定住の予定です。

 一方で、私がサラリーマンだったころや、経営者として従業員を数多く抱え、3つの事業所・店舗を経営していたときには、「賃貸のほうがいい」と考えていました。サラリーマン時代には異動による転勤や、転職して勤務先が変わるといった可能性がありましたし、独立起業したあとも、業態や事業規模に合わせてオフィスを移転する可能性があったからです。

 また、当時は夫婦2人で子どももいませんでしたから、将来の家族構成の変化に備える必要がありましたし、収入も不安定だろうという予測もあり、自分の状況に応じて住まいを選べるようにしておく必要があったからです。

 そこで今回は、賃貸に住むことの魅力とメリットをご紹介します。

賃貸は自由を買う行為

 賃貸で得られるものは自由です。転職した、結婚した、子供ができた、収入が上がった、もっと便利な街を見つけた、もっと高品質な物件を見つけた、という場合でも、最適な場所の最適な物件を選べます。資産価値などを考える必要もなく、売るとか貸すとか余計なことを考える必要もありません。

 六本木ヒルズレジデンスや東京ミッドタウン・レジデンシィズは、月額賃料が100~500万円もします。そんな場所を借りている人の多くは起業家や会社経営者です。職住近接で時間を買うという理由だけでなく、会社の業績に柔軟に対応できるようにするため、という理由もあります。あるいは本社の移転とか、海外支社立ち上げの陣頭指揮を執るとか、拠点が変わる可能性もあるからでしょう。

 大家の了解がなければ自分で勝手に内装を変えることはできないという制約はあるものの、建物のメンテナンスや、内装・設備の修繕などを気にする必要がありません。これらは基本的に大家の負担だからです。設備が故障したら大家(もしくは管理会社)に電話すれば、故意や過失でなければ自己負担ゼロで修理してくれます。これはラクです。

人間関係のしがらみからの自由

 たとえば付近の環境が悪化した、近所にヘンな人が住んでいる、間取りが使いにくいという場合でも、賃貸なら気軽に引っ越すことができます。騒音おばさんやゴミ屋敷といったニュースが話題になることがありますが、所有しているから移動できず、周辺の人は困惑します。しかし賃貸なら、そんなものに煩わされるくらいなら、さっさと引っ越そうという判断ができます。

 また、マンションを所有すると、管理組合への参加など、本業には不要なことに時間を奪われることがあります。私も所有する物件の数だけ「組合の役員になりませんか」と誘いが来ますが、賃貸ならそんな面倒なことはありません。

変わる返済能力に対応できる

 収入が減る、会社がなくなる、突然失業するということも、当たり前のように起こる時代です。そんなとき、ローン返済につまずく可能性もあります。

 また、住宅ローンを返済するために働きたい人はいませんが、「住宅ローンが残っているから」という理由で、定年退職後も働かざるを得ない人もいます。人生で最も活躍できる期間を住宅ローンを気にしながら生きるとか、本当は引退したいのにやむを得ず働くというのは、それはそれでしんどいものがあります。

 しかし賃貸ならば、収入が減って苦しくなったら家賃の安い物件に引っ越して対応することができます。収入が上がった、結婚した、家族が増えた、ということなら、広くて高級な物件に住み替えることもできます。

 自分の支払能力は変わる可能性があり、賃貸はそうした変化にも自在に対応しやすい居住形態といえます。

老後は賃貸には住めないのか?

 また、「老後は賃貸物件が借りにくくなる」ともいわれることがあります。かつては、現在のような保証ビジネス(保証会社が入居者の支払能力を保証し、仮に滞納があっても一定期間は保証会社が家賃を立て替えて大家に支払う制度)がなく、保証人を立てられない独居老人は、賃貸物件を借りられませんでした。

 また、年金のみで収入が少ないとか、居室内で死亡するといったリスクがあるなどで、高齢者は避けられる傾向がありました。もちろん今でもありますが、昔ほどではありません。

 しかし高齢者を避けるのも、貸し手優位の時代だからできたことです。戦後からバブル期にかけての、住居不足の時代の名残りです。

 現在、日本の居住物件の空室率は年々上昇しており、すでに800万戸を超える空き住戸があるといわれています。人口が減少しているにもかかわらず、新築物件はどんどん建てられていますから、将来の空室はもっと増えるでしょう。すると賃貸物件を所有する大家は空室に耐えられなくなり、よほど問題のある入居者はともかく、普通の人なら誰でもいいので入居を決めたいという大家が増えると予想されます。もはや借り手優位の時代です。

 確かに人気のエリアの人気物件ではまだまだ大家が強いため、高齢者単独での入居は難しい可能性はあります。しかし場所さえ贅沢をいわなければ、「高齢者は賃貸物件を借りられない」という状況はなくなっていくし、低廉な家賃の物件も増え、老後の負担もそれほどではない可能性が濃厚です。実際今でも地方の郊外に行くと、ファミリー向け物件でも家賃が月3万円以下の物件もたくさんあります。

車が運転できなくなるとつらい?

 年金が減り、家賃にあてるお金が厳しくなったとしても、上記のような地方郊外に住めば、劇的に軽い負担で住居を確保することができるでしょう。

 しかし、高齢で車の運転が難しくなったとき、買い物や通院などがつらいのは確かです。昨今、高齢者ドライバーによる交通事故が多発しており、なんらかの規制がかからないとも限りません。

 しかし、そうした懸念も払しょくされようとしています。それは自動運転技術の進展です。すでに米テスラモーターズがほぼ自動運転を実現させていますし、他メーカーでも自動車専用道路の単一車線上であれば自動運転が可能な段階にきています。おそらく10年後は、自分で運転する必要はなくなりそうです。すると、よほどの限界集落でなければどこに住んでも大丈夫という判断となり、一生賃貸という選択肢も悪くないでしょう。

家賃はレンタルサービスのひとつ

 不動産屋の営業マンの営業トークに、「家賃はドブに捨てるようなものですから」というものがあります。確かにその側面はありますが、賃貸をひとつのサービス料と考えればどうでしょうか。たとえばレンタルビデオ、レンタカーなど、世の中にレンタルビジネスは数多くありますが、いずれも「使った分だけ支払い、使い終わったら返却する」というものです。ということは、賃貸も住居のレンタルサービスと捉えることができます。

 ホテルに泊まる宿泊費を「ドブに捨てている」と思う人はいないと思います。もちろん一過性の宿泊と、継続して居住するものとは事情が異なりますが、住居とは基本的に「何かを成すための手段」に過ぎません。だから家賃を、「身軽さ・便利さ」「住み替えやすさ」や、「住宅ローンを抱えることに対するリスクヘッジ」としての代替コストと考えれば、無駄ではないと思える人もいるでしょう。

 つまり、賃貸という居住形態のメリットを享受できるサービス料だと考えれば、合理的な出費になるといえます。

移動とはチャンスを求める意思表示

 アメリカでは、「移動とは、何かを成し遂げたいという意思の表現である」といわれます。これは国土の広さの違いによるものでしょうか。新しいチャンスを求めて、より最適な場所へ移動するというのは、何もアメリカに限ったことではなく、日本でも同じです。東京にチャンスがあれば東京へ、ニューヨークにチャンスがあればニューヨークに。さらに、日本がヤバくなったら逃げ出せる、という選択肢を持っておける。賃貸とは、そういう身軽さ、自由さを与えてくれる居住形態といえます。

 そんなふうに賃貸のメリットを考えてみると、「自分の置かれた環境では、家は買うより借りたほうがいい」という判断になる人もいるでしょうし、「いや、やはり自分は買ったほうがいい」という判断になる人もいるでしょう。

 つまり他人が「家は買うな」「家は今が買い時」だと言ったとしても、それは必ずしも自分に当てはまるとは限らないのですから、自分自身の根拠を持って判断することです。
(文=午堂登紀雄/米国公認会計士、エデュビジョン代表取締役)

午堂登紀雄/米国公認会計士、エデュビジョン代表取締役

午堂登紀雄/米国公認会計士、エデュビジョン代表取締役

 1971年、岡山県瀬戸内市牛窓町生まれ。岡山県立岡山城東高等学校(第1期生)、中央大学経済学部国際経済学科卒。米国公認会計士。
 東京都内の会計事務所、コンビニエンスストアのミニストップ本部を経て、世界的な戦略系経営コンサルティングファームであるアーサー・D・リトルで経営コンサルタントとして勤務。
 2006年、不動産仲介を手掛ける株式会社プレミアム・インベストメント&パートナーズを設立。2008年、ビジネスパーソンを対象に、「話す」声をつくるためのボイストレーニングスクール「ビジヴォ」を秋葉原に開校。2015年に株式会社エデュビジョンとして法人化。不動産コンサルティングや教育関連事業などを手掛けつつ、個人投資家、ビジネス書作家、講演家としても活動している。

Twitter:@tokiogodo

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