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具体的に説明しましょう。たとえば、1000万円をハートフォード生命の変額個人年金に預けたとすると、10年間で満了になるものの場合、この1000万円が運用損で800万円を切ってしまったら販売停止になります。そして、その時点でお金を引き出すと800万円しか戻りません。ただ、引き出さずにその後15年間年金としてもらい続けると、累計で1000万円となります。
ただ、10年間預けても、トータルで支払った1000万円しか戻ってこないのですから、なんのうまみもないどころか、物価が上昇すれば大切な虎の子が実質的に目減りすることになります。
自分よりも先に保険会社が消えてしまった……
実は、日本で初めて変額個人年金を売り出したハートフォード生命(日本法人)という保険会社は、もうありません。
00年には、変額個人年金については国内トップクラスの販売実績がありましたが、業績が悪化して09年5月に日本市場での新規募集を停止しました。その後、14年にアメリカ本社が日本法人をオリックス生命保険に譲渡、売却したのです。
つまり、この会社で変額個人年金に加入した人たちのなかには、将来増えないことがわかっている個人年金に入り続けている人もいるということです。すでに「将来、増えるかもしれない」という希望を断たれてしまったにもかかわらず、です。
長い老後のための資金運用を考えて加入したら、自分よりも先に保険会社がなくなってしまった――なんだか、悪いジョークのようです。もちろん、既存の契約者たちは守られていますが、思い描いていた「大きく増えて戻ってくる」という現実は遠ざかってしまったといわざるを得ません。
実は今、日銀のマイナス金利の影響で運用が大変な状況になっていて、変額個人年金については募集停止が相次いでいます。郵便局でも、10本ある変額個人年金のうち、すでに6本が募集停止になっています。
こうした状況を見ると、「将来、大きく増えるかもしれませんよ」などというセールストークを鵜呑みにしてはいけないことがわかります。
(文=荻原博子/経済ジャーナリスト)
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