今、新型コロナウイルス感染の第3波が日本で広がっているが、そのうち感染経路不明はおおよそ50%にもおよんでいる。このようななかで、中国で相次いで輸入食品から新型コロナウイルスが検出されていることが報道されている。中国政府はウイルスの発生国とされることを否定し、ウイルスは海外から持ち込まれたとの主張を裏付けるために、輸入食品の大規模なウイルス検査を実施し、その過程で相次いで輸入食品からウイルスが検出された。
すでに30件ほど検出されているとされるが、中国で検出された主な品目は、エクアドル産冷凍エビのパッケージ、ブラジル産冷凍鳥手羽肉、ブラジル産冷凍牛肉のパッケージ、ロシア産冷凍イカ、インドネシア産冷凍魚、ノルウェー産冷凍サーモン、アルゼンチン産牛肉、マレーシア産太刀魚、冷凍タラなどとされている。
WHO(世界保健機関)によるとコロナウイルスはマイナス20℃で最長2年間生存するとされており、新型コロナウイルスも冷凍状態で2〜3カ月は生存するとされている。なので冷凍食品の製造に関わる労働者がウイルスに感染し、冷凍食品やそのパッケージに咳や手でウイルスを付着させれば、活性化しているウイルスが日本にも輸入されることになる。
海外の食品製造では劣悪な労働環境も指摘されている。米国の食肉処理場は3密の典型で、これまでも事故が多発してきたが、案の定、多くの食肉処理場が新型コロナウイルス感染者の大量発生で、閉鎖されたことは記憶に新しい。今、感染が急速に広がっている米国やブラジルをはじめとする南米諸国、インド、ロシア、EU諸国からの輸入食品は、汚染の危険性は高いといえる。当然、中国で摘発された新型コロナウイルス汚染輸入食品は、日本にも輸入されている可能性は高い。
輸入食品の検査率は8.5%
では、日本では水際の検査はなされているのか。厚生労働省は、WHOが問題ないとしているから新型コロナウイルスの検査はしないとしている。感染経路不明の新型コロナウイルス感染患者が、このウイルス汚染輸入食品によって感染している可能性がある。
もともと厚生労働省は輸入食品のウイルス検査に後ろ向きだった。輸入食品のウイルス汚染は、嘔吐や下痢などの食中毒を招くノロウイルスでも問題になっていた。輸入魚介類のノロウイルス汚染は、一定の割合存在するとの研究結果が相次いで発表され、やっと検査を開始したのは最近であった。PCR検査が必要なウイルス検査の手間や検査機材の不足、それに従事する食品衛生監視員の人員不足のなかで重い腰をやっと上げたのである。
今、輸入食品の検査率は、わずか8.5%で、91.5%は無検査で輸入されている。原因は、検査に携わる検疫所に配置されている食品衛生監視員の人員不足である。
では、消費者はどうしたらいいのか。まず、原産国が海外である冷凍食品を扱うときは、気をつけるべきである。パッケージの汚染もあるので、パッケージを触った手はよく洗うことが必要である。また、冷凍食品は加熱することが不可欠である。新型コロナウイルスは70℃以上の加熱で死滅するとされている。くれぐれも生食は避けることである。
(文=小倉正行/フリーライター)