東洋経済オンラインは、昨年11月に編集長が代わり、サイトも一新。リニューアル後の今年3月には、PCとスマートフォン(スマホ)を合わせて月間5300万PVを突破した。この快進撃の裏には、どのような戦略があったのか? また、ウェブメディアは儲からないといわれる状況で、ビジネス誌を手がける出版社ならではのビジネスモデルはあるのか?
東洋経済オンライン編集長・佐々木紀彦氏に「成功」の秘訣を聞いた。
–昨年11月にサイトをリニューアルし、3月には月間5300万PVを突破。早速、ビジネス誌系サイトNo.1と結果を出されましたね。
–サイトをリニューアルするにあたり、どんな方針を採用したのでしょうか?
佐々木 まず、サイト全体を「週刊東洋経済」本誌のネット版にするか、それとも本誌にはとらわれず、まったく新しいメディアをつくるか、どちらの方法でアプローチするかを考えました。雑誌をつくっている既存の出版社の多くは雑誌のネット版を選びます。我々もリニューアル前はそうでした。しかし、リサーチをしていくと、紙とネットではウケるものが違うということがわかったので、ネット上に新しいメディアをつくろうとなりました。
–以前の東洋経済オンラインはサイトのデザインが落ち着いたトーンでしたが、リニューアル後は明るくなりましたね。
佐々木 リニューアル後、コンセプトを「新世代のリーダーのためのビジネスサイト」とし、20〜30代の最先端のビジネスパーソンをターゲットにしました。
–なぜ20〜30代をメインターゲットにしたのでしょうか?
佐々木 理由は主に2つあります。まず、歴史を振り返ると、現在のような時代の変わり目には、30代の人が新たな面白い試みを始めた時期なのです。例えば、福沢諭吉が私塾に「慶應」という名前をつけたのが33歳、ソニーの井深大さんがソニーの前身である東京通信工業を設立したのが37歳、そして東洋経済新報社の創業者である町田忠治が同社を設立したのが32歳。そういった歴史から考えると、現在のような変革が期待される時期には、30代の人に注目すべきなのではないかと。
2つ目の理由は、今までのビジネス誌では50代の意思決定層をターゲットにすることが王道でした。人口が多い団塊の世代が、50代でバリバリ活躍している頃は、それが正しかったのかもしれません。しかし、団塊の世代が引退した現在、人口が多いのは彼らの子どもたち、つまり30〜40代の団塊の世代ジュニアです。その団塊の世代ジュニアをターゲットにしようと考えた時、彼らが本当に面白いと思って読むビジネスメディアがないのが現状です。
また、日経ビジネスオンラインもダイヤモンド・オンラインも基本的には雑誌と同じく、30〜50代のエグゼクティブをターゲットにしています。ですから、日経やダイヤモンドがターゲットにしている年齢層より世代を下げ、それらとは明確に差別化され、団塊の世代ジュニアが面白く読めるようなメディアをつくろうということです。
●コンテンツも大胆に刷新
–コンセプトとターゲットを固めたのち、具体的にはどんなコンテンツを増やしていったのでしょうか?