新年を迎えても菅義偉首相の評判はすこぶる悪い。1月7日には、首都圏の1都3県に緊急事態宣言を再発令した。昨年末の12月25日に行った記者会見で、菅首相は「今は緊急事態宣言を出すような状況ではない」と断言していたのに、その舌の根も乾かぬ2週間後には宣言発令に追い込まれたのだ。
「Go To トラベル」の一時停止が後手に回ったことなどが影響して内閣支持率が暴落中だが、菅政権の新型コロナ対策に対する国民の不満は年が明けても収まる気配がない。そんななかで世論の“菅離れ”をさらに加速させそうなのが、自民党の二階俊博幹事長の存在だ。
二階氏はいわずと知れた全国旅行業協会会長。いまや日本医師会の中川俊男会長が「感染爆発といってもいい状況」と言及するほどまでにコロナの感染拡大が深刻なのにもかかわらず、二階氏は経済や観光に固執している。
イギリスや南アフリカなどで見つかった変異ウイルスへの水際対策。政府は昨年12月28日に全世界を対象にした新規入国を一時停止したのに続き、例外扱いしてきた中国や韓国など11カ国・地域からのビジネス関係者らの往来も緊急事態宣言発令に伴いストップする方向で一旦調整に入った。ところが一転、例外を温存した。菅首相が入国継続にこだわったとされるが、後ろで親中派の二階氏の意向が働いたとみられている。
「自民党内では、安倍前首相の出身派閥である清和会など対中強硬派の議員を中心に、外国からの入国は全面的に止めるべきだという主張だった。一方で、二階派の議員は『ビジネス往来まで止めれば経済にダメージだ』と主張。派閥領袖の二階幹事長が強く求めたのだろう。インバウンド政策に傾倒している菅首相自身も、根本の考え方としてはビジネス往来重視なのだろうが、今はタイミングが悪いのがわかっている。だから、一度は停止することで調整に入ったのに、結局、幹事長の意向は拒否できなかったということ」(自民党関係者)
菅降ろしの気配
さらに驚いたことに、1月7日、自民党の観光立国調査会が緊急事態宣言解除後に「GoTo トラベル」を速やかに再開すべきだとの考えで一致、政府に提言することを決めたのだ。調査会の会長は二階氏の片腕である林幹雄幹事長代理で、会合には二階氏も出席。林氏は「観光は日本経済の柱で、地方創生の切り札だ」とトラベル事業の必要性を強調した。これにも二階氏の意向が強く働いているのは間違いない。
「緊急事態宣言が発令されたばかりだというのに、いかに世論からズレているか。自民党はおかしくなっている」(野党議員)
昨年12月に批判を浴びた菅首相の「ステーキ会食」も、二階氏が主催する会合に菅首相が呼ばれ、出向いた。「Go To トラベル」の停止を決めたまさにその当日の夜であり、大人数での会食自粛を国民に呼びかけていたのだから、8人以上が集うステーキ会食に参加すれば批判を浴びるだろうことは想像がついただろうに、二階氏には頭が上がらず、拒否できないのが今の菅首相なのである。
「自民党内では清和会を中心にすでに菅降ろしの気配が出てきている。二階幹事長に従い続ければ支持率はさらに下がる。菅降ろしの面々は、ほくそ笑んでいる」(自民党関係者)
菅政権誕生の立役者だけに、菅首相は二階氏を切ることはできないだろう。しかし、それが結局、自分の首を絞めることになる。
(文=編集部)