仕事の現況
──1回の料金はどれくらいですか?
増田 基本的には1時間1万円です。
──1日どれくらいのお客様がいらっしゃいましたか?
増田 大体2人ですね。施術自体が3時間ほどかかりますし、長い方で6時間かかったこともあります。間に休憩をしてもらったりすると、1日8時間くらいは作業していると思います。それに、お客さんにすぐ帰ってもらうみたいな感じが、僕はあまり好きじゃないんです。お客さんにはゆっくりくつろいでもらいたいと思っているので、終わったあとも少し世間話などをして、ゆっくり休んでから帰ってもらっています。
──どういったお客様がいらっしゃいますか?
増田 僕のスタジオには20代半ばから40代で会社員の方などがいらっしゃっています。珍しい職業では歯科医なんかもいますね。見えないところだったらOKみたいな感じです。
──暴力団関係者は来ますか?
増田 来られたことはありません。うちは基本的に口コミがメインになっているので、事前にどういった方なのかは把握した上で来店いただいています。今まで運営していて、誰からの紹介でもない飛び込みという人はいません。
業界の課題
──全国にどれくらいの彫師がいるかご存じですか?
増田 平成15年度で日本全国に3000人の彫師がいると聞いています。
──それは多いと思いますか? 少ないと思いますか?
増田 多いのではないかと思います。一般の方は、陰でこっそり行っているイメージが強いと思いますが、実は3000人もいますからね。ただ彫師が増えてしまったことで悪いこともあります。機材が揃えば誰でも始められる仕事ではあるので、サプライヤー(販売者)が経営するネットショップで購入して、すぐにでも彫師として仕事を始めることができてしまいます。
──ネットショップで購入するのはいけないことですか?
増田 罰則などはないですが、暗黙のルールのようなものがあります。対面式で購入する場合、どういった目的なのかも聞かれますし、オートクレーブ(高温高圧滅菌機)やステリライザー(殺菌線消毒器)などを購入しないと、そもそもタトゥーマシンは売ってくれません。しかし、ネットだとタトゥーマシンだけ購入して始めることができてしまいます。こういった衛生面の意識が低い人には、彫師として名乗ってほしくないです。
──今の法律では少し緩すぎる気もしませんか?
増田 はい、今のままでいいとは思っていません。アメリカのように、彫師になるためには許可制にするのもいいと思っています。僕も自分がこういった立場になってわかったことが多かったです。彫師の方たちが次々と逮捕されていくことに疑問を感じて、法廷闘争を選んだのと同じころに「SAVE TATTOOING in Japan(http://savetattoo.jp/)」というタトゥー文化を守る団体を結成しました。彫師も、好き勝手に彫っていいわけではないですし、きちんとした法整備をする必要はあると思っています。今はそれがないから、警察は医師法違反で捕まえています。しかし、それでは解決になっていないと思うんです。そのためのシンポジウムや資金集めのチャリティーイベントを開催しています。