──和彫、洋彫の違いは具体的にどういったものですか?
増田 和彫と洋彫はどちらも絵柄に意味があるので、基本的には同じですよね。あえて違いを挙げるとするなら、和彫は体のラインや骨格に合わせて絵柄を彫るものが昔からの風習で、今も変わっていないと思います。洋彫は段々と絵柄自体に意味を持たせているので、そういった意味では時代の変化と共に変わっていっているものだと思います。
──どちらかに思い入れが強いなどありますか?
増田 最初は、和彫やトライバルは嫌いだったんです。僕はもともと、ニュースクールというスタイルでやっていこうと決めて始めたのですが、このスタイルは洋彫と和彫のどちらも知っていないとできないものなんです。音楽などと一緒で、過去の歴史やさまざまな作品に触れることで、新しいスタイルを考えていくことができるのではないかと思います。だから、最初は独自のスタイルでいこうと決めていましたが、やっていくうちにどんどん色々なスタイルを学ぶようになったので、今となっては「全部」に思い入れがあります。
──アートメイクについてはどう思いますか?
増田 これは偏見になるのかもしれませんが、技術や知識のない人がやっていると思います。僕がやらないからわからないこともあると思うのですが、アイラインや眉毛にタトゥーを入れてほしいと頼まれても、それは自分の考える“アート”ではないので、正直やりたいと思いません。そういった意味では美容になると思うので、美容整形などでやってもらうのが正解ではないでしょうか。今はまさに線引きがないことで大きな問題になっているので、アイラインや眉毛などにタトゥーを入れるのは禁止にしてもらっていいと思います。しかし、そんな簡単に線引きはできないでしょうから、たとえば首から上にタトゥーを入れる場合は医師免許が必要といった感じでいいのではないでしょうか。
警察や検察との闘争
──検察側からインクの成分に水銀などが混入していると指摘がありました。
増田 施術に使用するインクには、そういった成分は入っていません。検察側が主張しているインクの話は、かなり昔のことを言っているのだと思います。水銀などの人体に影響がある成分は、少なくとも僕の店で使っていたインクには入っていませんし、今までお客さんが施術後に体調不良を訴えてきたことも一度もないです。
──警察が来られた時にはどう思いましたか?
増田 ガサ入れ時点では、5人の刑事が来ました。いきなり捜査令状を見せられて、その内容は「グルトファイドを購入している」という理由で医師法違反だと言われました。警察に「彫師なら医師免許持っていないといけないだろ?」と言われたのですが、最初は「何を言っているんだろう」という感情でした。彫師で医師免許なんて聞いたことない、何か間違えているんじゃないかと思っていました。
──逮捕となった時、どのような心境でしたか?
増田 そのまま警察署で取り調べを受けて、何度か在宅で数回調書を作成していき、医師法違反として略式命令が下りました。罪を認め罰金30万円を支払ったら、医師免許を取得しなければ仕事を続けられないのか――。それはおかしいと思い、僕は闘うことを決めました。