──法廷闘争すると決めた時、どのような心境でしたか?
増田 正直、不安しかなかったですね。こういったかたちで裁判を起こしたことはないので、どうやって起こせばいいのか、自分は何をしていけばいいのか、何もかもわからないことばかりでした。弁護士の亀石倫子さんや弁護士団の方の協力、同じような境遇の方たちの考え方や支えがあったことで今があると思っています。
──初公判では、どのような心境でしたか?
増田 正直、今までにないほどの緊張でした。不安だからという意味ではなかったのですが、公判前にマスコミの囲み取材を受けて、それがきっかけだったのか急に現実味が増してきて、どんどん緊張が強くなってしまい、法廷に立つギリギリまで全身が震えてしまったことは今でも忘れられない感覚です。
──彫師に医師免許制度を設けたらおかしいでしょうか?
増田 正直、違和感しかないですね。医師免許を持っている彫師ということは、病院に勤務するんでしょうか。タトゥーを入れたい方は、「次の方どうぞ」と呼ばれるまで患者さんたちと一緒に待合室で名前を呼ばれるまで待つのでしょうか。それはいくらなんでもやりすぎかなと思います。
──医師免許を彫師が取得するか、医師が彫師になるのでしょうか。
増田 医師が美術大学に行くのか、彫師が医大に行くのかといった話になりますね。彫師が医大に行って医師免許を取得したら、そのまま医師になってしまうのではないでしょうか。また、医師を目指している人が卒業後に美大に行ってアートの勉強なんて、絶対考えられないですよね。
──これからタトゥーを入れたいと考えている人にメッセージはありますか?
増田 何を入れるのか、なぜ入れるのかなどをよく考えて、きちんとした覚悟を持ってほしいです。若くしてタトゥーを入れた人が、年を重ねてから邪魔になってしまっていることもよくありますし、そもそもタトゥーを入れたことを後悔している人もいます。本当の意味で覚悟がないとダメだと思うんです。
公衆浴場やプールなどにも入れなくなってしまいます。先日のニュースで、ある芸能人が麻薬などに手を出しているという報道と併せて、「体にタトゥーを入れている」という内容も取り上げられていました。タトゥーを入れているということに対して、やはり日本では悪者のような見方が強いんだなと、あらためて実感しました。
そういった部分も少しずつ変えていければいいのですが、どうしても長い時間がかかるものだと思いますので、今の日本では一度入れてしまったらまだまだ生きづらいと思います。
──最後に、タトゥーは増田さんにとってなんでしょうか?
増田 難しい質問ですね。一言でいうなら、「タトゥーは僕のすべて。ライフスタイル」この言葉でしか伝えられません。
──ありがとうございました。
(構成=作道美稚代)
●作道 美稚代
1986年生まれ。現在はIT企業の株式会社ファブリジオの代表取締役社長と兼任し、執筆活動中。