2月14日に初回放送を迎えたNHK大河ドラマ『青天を衝け』の平均視聴率が20.0%(ビデオリサーチ調べ、関東地区)の高視聴率をマークし、話題を呼んでいる。大河の初回視聴率が20%の大台に乗るのは、綾瀬はるか主演の『八重の桜』以来8年ぶりの快挙となる。
しかし、翌週21日放送の第2話は16.9%と初回から3.1ポイントもダウン。前作の大河『麒麟がくる』の第2話(17.9%)を下回る結果となった。
「第1話から第2話への視聴率下落率をみると、『青天を衝け』は15.5%です。これは、大河ワースト視聴率を記録した『いだてん~東京オリムピック噺~』(2019年)の下落率22.6%よりはさすがに小さいものの、『麒麟がくる』の6.2%の3倍近い落ち具合で、全話通じて苦戦も予想されます」(テレビ局関係者)
『青天を衝け』は「日本資本主義の父」と呼ばれ、江戸・明治・大正・昭和という4つの時代を生きた実業家、渋沢栄一を主人公とする。その渋沢を、若手俳優のなかで頭角を現しつつある吉沢亮が演じる。
「30%近い視聴率をマークした『翔ぶが如く』(1990年)の例もあるように、明治時代以降がメインとなる近代モノの大河は数字が取れないというわけではありませんが、江戸~明治がメインの『西郷どん』(18年)、明治~昭和の『いだてん』と、ここ数年だけをみれば、近代モノが苦戦している。それだけに『青天を衝け』も“嫌な予感”がしますが、これまでのコテコテの時代モノの大河と違い、主人公が実業家ということもあり、視聴率がどう転ぶか見えない部分もあります」(テレビ局関係者)
例年、大河は第1話が1月の第一日曜日に放送され、約1年後の12月に最終回を迎えるが、新型コロナウイルス感染拡大の影響で『麒麟がくる』の最終回が今年にずれ込んだため、『青天を衝け』は2月開始というイレギュラーなかたちとなった。
「すでに地元メディアなどでも報じられているように、NHKは群馬県安中市の広大なスペースに村などを再現する大規模なセットをつくり、昨年から撮影が行われています。大河の製作費は1話あたり約1億円といわれていますが、新型コロナの影響もあり前作の『麒麟がくる』では大規模な屋外ロケが少なくなったため、余った予算を『青天を衝け』に回すことで通常以上の製作費を投入するという噂もあるようです」(テレビ局関係者)
NHK改革とリンク
NHK番組の製作費の原資は、もちろん国民が負担しているNHK受信料だ。菅政権は支持率浮揚策の目玉として、携帯電話料金の値下げとNHK受信料の値下げを掲げている。NHKは1月に発表した2021~23年度の中期経営計画で23年度の受信料値下げを盛り込んだが、武田良太総務相は「一分一秒でも早く国民の負担を軽減してほしい」などと述べ、値下げ時期の前倒しを求めている。
「総務省の接待問題が落ち着けば、政府は間違いなく、国民受けして“わかりやすい”NHK受信料の値下げに力を入れてくる。そうなれば、一人当たり年1万5000円近い受信料やNHKグループの4000億円近い余剰金、さらには平均年収1000万円以上といわれる職員の好待遇などがクローズアップされてくる。そうしたなかで、もし『青天を衝け』の不調が続けば、“なぜ受信料から多額の製作費を使って、低視聴率のドラマをつくるのか”という世論が強まる可能性もある。
無料の民放テレビ局やNetflixやAmazonプライム・ビデオなど有料ネット配信が多数存在するなか、NHKが多額の受信料を使ってドラマや娯楽番組を制作する意味があるのかという問題が、改めて問われてくるでしょう」(テレビ局関係者)
『青天を衝け』がNHKにとって持つ意味は、予想以上に大きいのかもしれない。
(文=編集部)