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サンマ漁獲枠、4割削減へ…中国のイカ違法乱獲→日本漁業者が不漁、背景に政府の弱腰外交

文=編集部
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「Getty Images」より

 日本、中国、台湾、ロシアなど8カ国・地域は2月、今年のサンマ漁獲枠を前年比40%減の33万トンに抑えることで合意した。日本は深刻な不漁状況を考慮し、減枠を提案。オンライン形式の協議という厳しい環境のなか、資源管理に消極的な中国を押さえ込んだことは大きな成果だ。ただ、中国が受け入れた背景には日本にとって不都合な思惑がある。

日本近海で違法操業活発に?

 今回、北太平洋漁業委員会(NPFC)という国際会議でサンマの枠削減を決めた。国際条約に基づき、上限を超過して北太平洋でサンマ漁を行うことはご法度だ。しかも、環境問題に厳しい視線を向ける米国やカナダもNPFCのメンバーに名を連ねている上、資源管理に積極的な欧州連合(EU)も新たに加盟が認められたことから、中国包囲網が重層的になった。さすがに中国も条約に違反する密漁などを行うことは考えにくい。

 一方、「日本近海で違法操業をさらに活発化させるリスクがある」。政府関係者がこう警鐘を鳴らす。中国は日本海でスルメイカを違法に乱獲し、その数量は年間15万トンと日本の漁獲量の約10倍に上る。

 多くの国・地域の監視が働く北太平洋とは異なり、日本海のスルメイカは国際的に保護管理する仕組みがなく、違法操業問題はあくまでも日中間で解決しなければいけない問題とされる。したがって、北太平洋ではルールを守る一方、日本海には攻勢を強めるという隠れたメッセージが透けて見え、弱腰外交に陥りがちな日本の足元を見たかのように違法漁船が日本海に大量に送り込まれるという見方が強まっているわけだ。

 これまでも日本政府は水面下で違法操業について是正するよう中国に求めているとみられる。しかし、日本を見下しているかのごとく、大和堆という好漁場の周辺で水産庁の取締船による退去警告を受けた中国漁船は2020年、前年比4倍の延べ約4400隻に上った。

中国に強硬姿勢示せ

 現在、金銭面から折り合いがつかず、政府は日本近海で中国が合法的にイカ漁を行う権利を与えていない。ただ、譲歩ばかりする外務省が中国に漁獲枠を付与する可能性も残っている。少なくとも、違法操業が完全になくなった状態を確認できるまで操業させないという強行姿勢を貫かないと、不漁に苦しむ国内漁業者に対して説明がつかない。

 さらに、違法操業の問題を2国間問題に矮小化するのではなく、国際社会を巻き込んで世論形成を図ることは不可欠。太平洋を横断するサンマと同様、日本海に生息するスルメイカも各国の共有資源であることに疑いない。日本海に面するのは日本、韓国、ロシア、北朝鮮の4カ国。北朝鮮はハードルが高いにしても、資源管理に理解のあるロシアと韓国と連携して国際ルールをつくる議論を始めることは急務だ。

 今回のNPFCの成功体験を追い風に、国際社会との協働により、中国の海洋覇権を抑制する。そんなシナリオを描いて実行に移さないと、気がついたら次から次へと漁業資源が枯渇しかねない。

(文=編集部)

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