もし、許諾を得る人を、一人でも忘れてしまったら、どうなるでしょうか。当然、権利トラブルになり、最悪の場合は裁判となり、さらにその一人が差止請求をしてきたら、間違いなく、クリプトン社のその商品(またはサービス)は、差し止めされることになるでしょう。権利関係をクリアにしておくことは、ビジネスにおいて、とてつもなく重要なことなのです。
そして、もう一つが「ピアプロリンク」です。さてここでもう一度、ピアプロ・キャラクター・ライセンス(PCL)の内容を復習してみましょう。
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(2)お金を儲ける目的でなければ、自分のホームページのトップに、「『初音ミク』の絵」をベースとして自分で描いた絵を掲載してもいい。「『初音ミク』が登場する小説」も「『初音ミク』が登場する同人誌」も無料配布ならOKです。
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という私のPCLの説明に対して、読者の方から、「PCLは『無料配布』に限定される訳ではない」「PCLでは、『同人誌』の制作費相当のお金を徴収することは、許されている」というクレームをいただきました。残念ですが、この件に関しては私が正しいです。
「同人誌」の制作費相当のお金であっても、PCL違反です。PCLを遵守するためには、その同人誌は、絶対的な意味において「0円」でなければなりません。たとえ「1円」でも対価を受け取れば、PCLの効力は発生しなくなります。
あなたは、クリプトン社とその「1円」に関する契約を行わなければ、「初音ミク」を利用することはできず、契約なしに「1円販売」を実施すれば、著作権法27条、28条の違法状態が発生し、クリプトン社はその同人誌を差し止めし、または損害賠償(100部売れば100円を)請求することが可能な状態となります。
しかし、これはあなたにとってもクリプトン社にとっても、恐ろしく面倒で、お互いに不幸な話です。
そこでクリプトン社が考案したのが、「ピアプロリンク」です。
制作費相当の少額対価の発生に対しては、その作者が「そのような利用を行います」と申請を行うと、「その申請を受理しました」という「証明書」を発行することにしたのです。「証明書」といっても、QRコードを、無審査で発行するものです。
Webサイト上で必要な事項を記入すると、自動的にこのQRコードが発行されますので、このQRコードを同人誌等に印刷すればよいのです。
クリプトン社からは、「実費程度の非営利かつ有償の利用に対して、スムーズに利用申請できる仕組み」をつくり【註2】、その趣旨として「QRコードによって、クリエイターに対してコメントをするなど、クリエイターとクリプトン社、クリエイターとユーザーを『つなぐ』ことを可能とするもの」との説明をいただきました。
もちろん、これは事実だと思うのですが、私としては、さらに3つほど、深い意義があると考えております。