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“加害者”家族の現実 失われる日常、自殺、退職、執拗な脅迫…広く親戚にまで影響

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鈴木 人々の犯罪に対する意識というものはマスコミの報道などを通じて形成されるケースは取材をしてみると実際にあります。そういう意味で、メディアの報道の仕方にも責任はあると思います。例えば、日本全国の不特定多数の人たちが加害者の家に手紙を送るのは、メディアの報道を見て事件のことを知ったからです。さらに、学校、職場にも取材が行ってしまう。しかし、基本的なことですが、自分もメディアに身を置く一人として、そうした取材行為そのものは、正確な情報を得て伝えるという意味で、必要なものだと思っています。

 それに、新聞やテレビで使われている容疑者の顔写真は、警察が提供したものではありません。近所の人や関係者を回って入手したものなのです。他メディアに容疑者の顔写真が掲載されているのに、自社のメディアに出ていないとはならないように、必死になって探し回るわけです。そうやって自宅へ訪ねてくることに、近所の人たちは苛立ち、それが結果として、加害者の家族に向いていったという話は、取材で聞きました。

●加害者家族支援の現在

–加害者家族の支援を行う、NPO・ワールドオープンハートについて教えていただけますか?

鈴木 この団体の発起人である阿部恭子さんが、大学院で犯罪被害者の支援をどのように行っていけばいいのかを研究している中で、ある事件で加害者の家族が自殺したことを知り、海外には当たり前のように存在する加害者家族に対する支援組織がなぜ日本にないのかを疑問に思ったのがきっかけと聞いています。阿部さんは、刑事事件を扱う弁護士さんや、自殺予防に取り組む精神保健福祉士、精神看護学の専門家などに呼びかけ、 08年8月、ワールドオープンハートを設立しました。

–具体的にはどのような活動をしているのですか?

鈴木 ワールドオープンハートの活動は、支援というよりも、現実的に困っている人がいるなら少しでも手助けしたいという思いで活動されているようです。具体的には、裁判はどのように進むのかについての情報提供や、子供が学校で困っている場合は、ワールドオープンハートのスタッフが同行して、家族からは言いにくいことを学校の先生と相談するというようなこともやっているようですね。

 それから、ワールドオープンハートでは、加害者家族の実態を知るための全国規模のアンケート調査も行いました。その結果、事件後に困ったことで多かったのは、「安心して話せる人がいない」「被害者や遺族への対応に悩んだ」「報道にショックを受けた」ということでした。

–このような加害者支援の活動は、今後広がっていくとお考えでしょうか?

鈴木 ワールドオープンハートは現在、東京と大阪に支部があり、関東や関西にいる加害者家族に対して「オープンハートタイム」と呼ばれる家族の集いを開催しています。また、スタッフとして参加する人も、今まで仙台にしかいなかったのが、東京や関西でも出てきています。少しずつですが、ワールドオープンハートの活動は広がっていると思います。ただ、全国規模で本格的にこのような活動をする組織は増えていないと思います。もちろん、小さな組織としての活動はいろいろとあるようですが。

–一昨年放送されたテレビドラマ『それでも、生きてゆく』(フジテレビ系)では、殺人事件の被害者家族と加害者家族の男女が恋に落ち、両家族が関係を築くことは可能かというテーマを扱い、話題となりました。現実的に、こうした関係の構築は可能でしょうか?

鈴木 被害者家族としては、「加害者本人に一生罪を背負ってほしい」「謝ってもらっても被害者が戻ってくるわけではない」「被害者のことを忘れるのは言語道断」というように考えていると思います。そして、そのような感情は加害者の家族に対しても同じだと考えるのが自然ではないでしょうか。そういうことを考えると、被害者家族の側から加害者家族へ歩み寄るというのはかなり難しいと思います。一方で、加害者家族としては、被害者の家族に歩み寄ることで、謝罪をさせてもらったりお墓参りをさせてもらうことで、肩の荷を下ろせる部分もあるとは思います。

–加害者家族に手を差し伸べる前に、被害者やその家族を救うべきではないかという意見もあります。

鈴木 ワールドオープンハートのスタッフの方が、「自分の家族が事件に巻き込まれたら、その加害者の家族のことを許せるという自信はない」とおっしゃっていたのが、すごく印象的でした、やはり、自分が被害者家族の立場に立ったとき、あるいは加害者家族の立場に立ったとき、どのような感情を持つだろうか、そういう葛藤はありますよね。でも、さらなる犠牲者を出したくないという思いは一緒だと思います。

●未成年者の犯罪は、親の責任か?

–未成年者の犯罪の場合、その責任の大半は親にあるという見方もありますが、こうした見方について、どのように考えられますか?

鈴木 事件の質にもよりますが、一般論として親にも責任があるケースは少なくないと思います。不安定な家庭環境だと、子供が発しているSOSのサインを見逃す、あるいは子供自身が不安定になるということはあると思います。でも、そのことと、周りの人が親の責任だと責めることとはちょっと違うと思います。

BusinessJournal編集部

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