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「相馬勝の国際情勢インテリジェンス」

中国、6年以内に台湾へ侵攻シナリオ…「世界最強の軍隊建設」「中華民族の復興」掲げる

取材・文=相馬勝/ジャーナリスト
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「Getty Images」より

 中国の習近平国家主席(中央軍事委員会主席)は3月9日午後、全国人民代表大会(全人代=国会に相当)の中国人民解放軍・武装警察部隊代表団の全体会議に出席し、「2027年(8月1日)の軍創設100周年まで、台湾解放を実現しなければならない」などと語り、台湾統一の具体的なタイムテーブルを示していたことがわかった。習氏が公の場で「台湾解放」という言葉を使うのは初めてとみられる。

 米インド太平洋軍のフィリップ・デービッドソン司令官も3月9日(日本時間3月10日)、米上院軍事委員会で「今後6年以内に中国が台湾を侵攻する可能性がある」と述べて、中国軍の台湾への軍事攻勢に強い警戒を示しており、中国は今後、台湾への揺さぶりの動きを強めてくる可能性が高まっているのは間違いない。

 軍・武装警察部隊代表団の全体会議には習氏を筆頭に、制服組ナンバー1の許其亮・中央軍事委副主席ら中央軍事委員全員が出席したのに加え、各地方軍区の司令官ら約250人が参加するなど、中央軍事委員会最高幹部会議の様相を示していた。とくに、中国では昨年1月以来、新型コロナウイルスの感染拡大で、全国の軍指導者が一堂に会する機会がなかっただけに、習氏も満面の笑みで会場に入り、参加者をねぎらう言葉をかけたほどだ。

 習氏は演説冒頭、「今年は中国共産党の建国100周年であり、第14次5カ年計画(2021~25年)の開幕の年であり、社会主義現化国家の新たな旅が始まった年でもあるという重要な節目だ」と前置き。そのうえで、習氏は「今年7月23日の中国共産党創設100周年の次の節目は27年8月1日の軍創設100周年であり、「戦争に勝つことができる世界最強の軍隊を建設しなければならない」と強調した。

 さらに、習氏は「党中央委員会と中央軍事委員会の決意を深く理解し、第14次5カ年計画のレイアウトを計画し、推進するなかで、2027年の軍創設100周年の軍事建設目標の実現に集中しなければならない」と力説したあと、「国家の主権を維持し、軍事科学技術を確立、中国の軍隊現代化の建設などの完成を急がなければならない」と強調した。

 さらに、習氏は「現在の中国を取り巻く安全保障環境は不安定であり不確実性が高い」と述べながらも、「台湾の解放をはじめとする『建軍100年までの奮闘目標』を実現しなければならない」と主張した。習氏が軍や武装警察の全体会議の場で、「台湾解放」という言葉を使うのは初めてとみられる。

習近平、狙う4選

 習氏が言及している「建軍100周年」とは、今から6年先の2017年8月1日のことで、さきに引用した米インド太平洋軍のフィリップ・デービッドソン司令官の「今後6年以内」と符合する。この間に、2022年には習氏の総書記3期目を決めるとみられる第20回党大会が控えており、その5年後の27年秋の第21回党大会では、建軍100年までの奮闘目標である「台湾解放」を成し遂げた習氏が党最高指導者の4選を決めて、習新最高指導者の座を確実にするとのタイムテーブルを描いているとみられる。

 北京の外交筋によると、「建軍100年までの奮闘目標」とは「軍事理論の現代化、軍隊組織形態の現代化、軍事人員の現代化、武器装備の現代化」という中国軍の建設に加え、最重要命題として「国家主権の維持及び中華民族の復興」が挙げられている。

 これについて、中国共産党機関紙・人民日報系の環球時報英語版(電子版)は具体的に「建軍100年までの奮闘目標」について「『西太平洋での覇権国家(米国)による脅威に対抗できる能力を持つ軍』の実現を目指している」という専門家の見方を伝えている。このため、同筋は「習氏の発言は中国軍が今後、27年までに台湾侵攻作戦を実行する可能性を強く示唆しているといえよう」と指摘している。

(取材・文=相馬勝/ジャーナリスト)

相馬勝/ジャーナリスト

相馬勝/ジャーナリスト

1956年、青森県生まれ。東京外国語大学中国学科卒業。産経新聞外信部記者、次長、香港支局長、米ジョージワシントン大学東アジア研究所でフルブライト研究員、米ハーバード大学でニーマン特別ジャーナリズム研究員を経て、2010年6月末で産経新聞社を退社し現在ジャーナリスト。著書は「中国共産党に消された人々」(小学館刊=小学館ノンフィクション大賞優秀賞受賞作品)、「中国軍300万人次の戦争」(講談社)、「ハーバード大学で日本はこう教えられている」(新潮社刊)、「習近平の『反日計画』―中国『機密文書』に記された危険な野望」(小学館刊)など多数。

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