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検察、元山口組系組員に虚偽証言強要で便宜供与か…「埼玉抗争」裁判で爆弾証言

文=越谷慶/ジャーナリスト
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検察、元山口組系組員に虚偽証言強要で便宜供与か…「埼玉抗争」裁判で爆弾証言の画像1さいたま地方検察庁(「Wikipedia」より/Ebiebi2)

 山口組住吉会のいわゆる「埼玉抗争」に関連し、2008年に住吉会系組員の射殺を指示したとして、一、二審で有罪判決を受けていた6代目山口組2代目小西一家・落合勇治総長の上告が12月19日付けで棄却された。これにより、総長の無期懲役と罰金3000万円の刑が確定する。

「埼玉抗争」の発端は、2008年3月31日に埼玉・八潮市内で6代目山口組の2次団体・小西一家の関係者(当時35)が住吉会系組織の組員に刺殺されたことだ。

 この直後から、山口組系組員が同県・草加市やさいたま市内の住吉会系組事務所などの襲撃を開始。翌4月1日には、ふじみ野市内の住吉会系組事務所の駐車場で組員A(当時35)が射殺された。ここで、両組織の幹部らが事態を重く見て同日に話し合いが持たれ、翌2日には住吉会が山口組に香典を払うことで“スピード手打ち”となっている。

 だが、その後も捜査は続いた。1件の殺人事件で54人以上が逮捕され、落合総長も殺人罪で逮捕される。総長は、のちに組織犯罪処罰法違反で起訴されたが、物証もなく殺人での立件が難しいと判断した検察と警察の“苦肉の策”であろう。

元組員が検察の“司法取引”以上の闇を暴露

 2013年5月、さいたま地方裁判所で行われた落合総長の裁判員裁判(多和田隆史裁判長)の初公判。正門以外は閉鎖され、来庁者全員に金属探知機による所持品検査が行われるという厳戒態勢の下で開廷した。

 マスメディアがたびたび「暴力団幹部の裁判にとまどう裁判員」の様子を報じるなかで、落合総長は起訴内容を否認し、無罪を主張した。

 一方で、「総長の犯罪」を裏付ける物証はなく、証人として射殺事件に関与した、落合総長の側近だった元組員B(この件で懲役14年の刑が確定)らが出廷した。

「すべて落合さんの指示でした」

 このBらの証言が決め手となり、落合総長は一審で無期懲役、罰金3000万円の実刑判決を受ける。

 だが、裁判は意外な展開を見せる。2015年からの控訴審で、Bを含む3人の元組員が一審の証言を撤回したのだ。古希(70歳)に近い落合総長が一審で無期懲役判決を受けたことで、Bらは考えを変えたのだという。

「落合さんには奥さんや娘さんもいる。申し訳ないことをした」

 Bは法廷でこう述べ、さいたま地方検察庁の検察官から、落合総長を首謀者にするように指示されたことを明かした。検察官の指示に従うことで、Bはファストフードの差し入れや長時間の入浴、さらには株の売買の取次まで、さまざまな便宜供与を受けたことも証言している。

「供述を維持するためだろうが、検察が株の取引を取り次ぐなんて聞いたことがない」

 当時の弁護団長は「週刊朝日」(朝日新聞出版)の取材に対して、こうコメントしている。まさに“司法取引”以上の爆弾発言として複数のメディアが報じたが、裁判には影響がなかった。

 結局、東京高等裁判所(栃木力裁判長)は、この証言の信用性を否定して一審を支持、最高裁判所(第3小法廷・藤田宙靖裁判長)も同様の判断を示したのである。一審と二審で証言の内容が180度変わったにもかかわらず、最高裁での弁論は一度も開かれないままであった。

「この事件は、もっと慎重に審理されるべきでした」

 作家の宮崎学氏は、こう指摘する。

「埼玉幼女連続殺人や光市母子殺人のような死刑が確実視されていた事件でも弁論が開かれているのに、落合さんの件では開かれなかったというのは『ヤクザ罪』以外の何物でもないですね。警察と検察、裁判所の“三位一体”の意図のようなものを感じます」(宮崎氏)

上告棄却の情報が事前にメディアに漏洩か

 上告棄却が決定した19日から弁護団にマスメディアの問い合わせが殺到したことも、この裁判の“特徴”といえる。上告棄却の決定は最高裁から当事者に簡易書留で送られるのが一般的だが、送達前にメディアがキャッチし、弁護団に連絡したのだ。だが、実際に報じたのは小西一家の地元・静岡のメディアなど数社にすぎなかった。

 なぜリークが行われたのか、真相は不明だが、異例ずくめの裁判であったことは間違いない。落合総長はすでに再審請求を準備しているとの話もあり、引き続き注目したい。
(文=越谷慶/ジャーナリスト)

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