神戸山口組にあって、勢力を拡大し続けている組織がある。それは全盛期に6000人とも8000人ともいわれた三代目山健組で長年にわたり舎弟頭を務めた、太田守正組長率いる太田興業だ。
太田興業は五代目山口組の尖兵役として、いち早く関東へ進出したことでも知られている武闘派組織だが、その勢力は山口組直参に昇格する以前の3次団体の頃から、すでにプラチナ(直参)級であった。それを象徴するかのように、三次団体だった時期でも、刑務所の中では太田興業の組員や関係者だけで形成された舎(グループ)があったほどだ。
さまざまな武勇を誇ってきた太田興業の太田組長は、六代目山口組体制移行後に一時は引退するも、一昨年、神戸山口組が六代目山口組から割って出ると現役復帰。神戸山口組舎弟頭補佐として組を支えてきたが、このたび最高顧問に就任するのではないかという話が業界関係者の間で駆け巡っているという。これについて神戸山口組関係者は、「今後、一段高い場所から神戸山口組を支えていかれるのだろう」と語っている。
神戸山口組ではそれだけでなく、地域住民や警察当局を意識した“ある措置”が取られるのではないかとみられている。それは、毎月開催していた定例会を今後は行わないようにするのではないかというのだ。
「前回、15日に開催された会合は定例会とみられていましたが、予定されていた執行部会にたまたま直参が揃っただけで、定例会ではなかったと神戸サイドでは話しているようです。その証に、その時の直参の親分衆は、いつも定例会で付けている代紋を付けていなかったですし、私服姿も何人か見受けられました」(ヤクザ事情に詳しいジャーナリスト)
このジャーナリストによれば、今後の神戸山口組は定例会を行わない代わりに、新設された「世話役」【参考記事】として選ばれた二次団体の幹部らが窓口となり、各組織との連絡事項のやりとりを進めていく方針ではないかという。
「世話役というポストは、神戸山口組結成後に懲罰委員が新設された際にも一度設置されていたのですが、今回の世話役とは意味合いが違うようです。前回の世話役は、全国各地で開かれた会合の幹事役のような役割を果たしていましたが、今度の世話役の役割は、直参組長らが一堂に会さなくても、執行部の意向を各組織に浸透させるために設けられたのではないでしょうか」(同)
定例会の実施は組織運営上重要だが、地域住民や当局からの反発を呼ぶなどのハレーションも少なくない。実際、定例会の開催場所だった淡路島の俠友会本部事務所はそうした要因から閉鎖せざるを得ない状況に陥った。そのため、世話役を置くなどして、定例会を開催しなくても組織を統治するための体制を神戸山口組は模索しているのではないだろうか。
六代目山口組の話題はもっぱら「忘年会」?
一方、任侠山口組では、11月25日付をもって二代目姫野組・日高洋行組長が組織統括に就任したことが関係者らに通達されたという。それによって、前任の二代目織田興業・紀嶋一志組長は山健同志会会長代行として、大阪北ブロック長補佐に専念することが告げられたようだ。大阪北ブロック長には大阪南ブロック長の京滋連合の大谷榮伸会長が兼任するかたちで就任したという。
組織改革を次々に断行させていく任侠山口組。今後、どういった変貌を遂げていくのだろうか。
対して六代目山口組は、どういった状況にあるのか。地元記者はこう語る。
「最近は、まったくきな臭い話などが聞こえてきません。自分たちが本筋であるという余裕の表れなのでしょうか。最近、親分衆から漏れ伝わってくるのは、忘年会などの話が主です」
山口組では、毎年ブロックごとに忘年会が開催されてきた。山口組が3つに分かれようとも、変わりなく忘年会を実施するという声しか漏れてこないということは、裏返すと組織内で徹底した情報管理がなされている表れともみることができる。
当局の取り締まりが強まるなか、2017年の幕はこのまま静かに降ろされていくのだろうか。
(文=沖田臥竜/作家)