「さかな さかな さかな~ 魚を食べると~
あたま あたま あたま~ 頭が良くなる~」
こんなサビで有名な楽曲『おさかな天国』(作詞:井上輝彦、作曲:柴矢俊彦)は、スーパーの鮮魚コーナーで今でもよく流れるお馴染みの曲である。これは、1991年に全国漁業協同組合連合会(JF全漁連)中央シーフードセンターのキャンペーンソングとして制作された。そんなこともあり、歌詞のなかには「みんなで魚を食べよう」「魚はぼくらを待っている」といったくだりもある。魚からしたら、この曲は決して「おさかな天国」ではなく、人間の凶暴性をさらに助長する「おさかな地獄」に違いない。もちろん、牛、豚、鶏などのかわいらしいマスコットを利用して、その消費を促そうとする食肉業界と同様ではあるが。
さて、日本は海に囲まれた島国であり、栄養価の高い海産物に恵まれてきた。そのためか、日本では概して肉よりも魚のほうが健康的であるとみなされているように思われる。
そして、いつ頃からなのかは不明だが、昔から「魚を食べると頭が良くなる」と言われてきた。
その一方で、科学的な根拠が乏しく、むやみにそんなことを言ってはならないという風潮が生まれた時期もあった。否定派の医師らや食肉業界からの反発などがあったのかもしれない。そんな過去を振り返ると、今ではかなり自由になったように思われる。科学的根拠が確立されつつあるからだろうか。
確かに、魚には消化に優れたタンパク質、カルシウム、タウリン、オメガ3脂肪酸など、豊富な栄養素が含まれている。オメガ3脂肪酸には、魚油に含まれる不飽和脂肪酸のEPA(エイコサペンタエン酸)やDHA(ドコサヘキサエン酸)のほか、エゴマや亜麻種子などの植物油に含まれるα-リノレン酸などがあるが、なかでもDHAは貴重である。DHAは、我々の体内では、脳や精液、網膜のリン脂質に含まれ、特に脳には欠かせない物質である。しかも、体内で合成できないα-リノレン酸を原料として生合成される。DHAは、頭の働きをよくし、ボケの予防と治療に効果的な成分だとみなされており、「魚を食べると頭が良くなる」に通じる。
近年の調査結果
2016年10月、アメリカの南カリフォルニア大学の研究グループは、血液中に含まれる脂肪に占めるDHAの割合(血清DHA値)が高いと、脳内に沈着しているアミロイドと呼ばれる線維状の異常タンパク質が少なく、アルツハイマー病の影響を受けやすいとされる脳内の特定エリアの大きさが保たれることを医学誌「JAMA Neurology」で発表した。