5月22日、新潟刑務所から一人の男が出てきた。
六代目山口組分裂当初、激戦区となった大阪ミナミの繁華街で、神戸山口組と激突し、その後、その抗争事件によって服役生活を送っていた六代目山口組幹部である、三代目一心会・能塚恵会長が出所したのだった。
能塚幹部は出所したその足で愛知県へと向かい、六代目山口組系組事務所で同団体上層部に出所の挨拶をすませたと見られる。その後、大阪府内の六代目山口組最高幹部の系列事務所で出所祝を兼ねた食事会が行われた模様だ。
「能塚会長の今回の懲役はヤクザ社会でいうジギリ、つまり組のために身体を賭けた組ごとだ。本来ならば、神戸市灘区にある山口組総本部で盛大な出所祝いが施されていたはずだ。同じ事件で服役していた親分は、出所後に最高幹部となり執行部入りを果たしている。山口組には功労者を手厚く報いる歴史がある。能塚会長も一線へと復帰を果たし、六代目山口組ではさらに期待の寄せられる立場になるのではないか」(組関係者)
そのように、第一線へと復帰を果たす幹部がいる一方で、当局による取り締まりは、コロナ禍にあっても続き、組織活動はさらなる緊張感に包まれている。
5月下旬、六代目山口組で長らく執行部の一端を担い、その後、舎弟になおった静岡県に本拠地を置く六代目山口組六代目清水一家の高木康男総長が逮捕されたのだ。
逮捕容疑は、六代目清水一家の本部事務所を管理していた法人の代表を変更する際に、法務局に虚偽の申請書を提出した疑いが持たれている。
「代表を務めていた幹部がヤクザを辞めたために、代表を変更させる必要があったのではないでしょうか。その変更を決議する株主総会議事録が偽造されたもので、結果、虚偽の登記をした疑いを持たれています。ただ、本部自体は事実上、以前から清水一家のものなので、仮に容疑事実がそうであったとしても、それによって何か被害が出たと言うわけではありません。どちらにせよ微罪による逮捕ですので、起訴されることはないのではないでしょうか」(地元記者)
暴力団排除条例施行以降、現在のヤクザはどのような微罪で逮捕されてもおかしくない状態にある。特に六代目山口組は、特定抗争指定暴力団に指定されているため、その余波をさらに強く受けているといえるだろう。これはやはり分裂問題がはっきりと解消されない限り、当局による弾圧は緩むことがないのだろうか。ある組織の幹部はそれについて、このように語る。
「警察に逮捕されるからどうこうというのは、あまり関係がないこと。本心では『ヤクザをやっている以上、警察に目をつけられれば、どんな微罪でもパクられるのは仕方ないこと』と思うようにしている。問題はあくまで優先順位。警察の厳罰化を緩和させるために分裂問題を解消させるのではなく、ヤクザ社会のけじめとして、はっきりとした形で分裂問題を終わらせることが、何より優先すべきこと。そうすれば取り締まりも自然と緩み、現在、使用制限を受けている事務所も以前のように使えるようになるだろう」
分裂問題については、コロナ禍の影響もあってか、表面上は静寂に包まれているように見える。だが、なにも動いていないかというとそうではないようだ。
「ある独立組織のトップが、神戸山口組から離脱した有力組織に接触したのではないかという話もある。時節柄、それは山口組分裂問題に関係するものであったのではないか。業界内では非常に注目されている」(事情通)
今後どのような展開が待っているのか。予想すらできないまま、分裂問題もまる6年を迎えようとしている。