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開成高、筑駒に次ぐ難関校…慶應高校・野球部入部は「想像絶する狭き門」だった

文=Business Journal編集部、協力=安田理/安田教育研究所代表
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慶應義塾高等学校野球部のHPより

 第105回全国高等学校野球選手権大会、夏の甲子園を制した慶應義塾高等学校野球部。同校は高偏差値の難関校として知られており、他の野球強豪校のような「スポーツ推薦枠」「野球推薦枠」による入学ルートが設けられていない。そのため、SNS上では「そこそこ野球がうまくて、勉強も頑張ればギリギリで合格できるかもしれないラインにいる中学生のなかで慶應高校を目指す子どもが急増し、倍率が急伸して結果的に不幸な目に遭う子どもが増えるのではないか」という見方も一部で話題を呼んでいる。慶應高校野球部に入るために好きな野球をセーブしてまで受験勉強に明け暮れた結果、同校入試の倍率が上がり不合格となってしまえば、それはある側面では「残念な結果」といえるのかもしれない。では慶應高校に入学するというのは、どれほど難しいことなのか。受験業界関係者の話を交えて検証してみた。

 国内の慶應義塾系列の高校には慶應義塾高校、慶應義塾志木高校、慶應義塾女子高校、慶應義塾湘南藤沢高等部の計4つあり、今回優勝したのは1つ目の慶應高校。1学年約700人の男子校で、慶應義塾普通部・中等部からの進学者が約4割、残りが一般入試・推薦入試などによる入学者。同じく男子校の慶應義塾志木高校は一般受験による入学者が多く、共学校の慶應義塾湘南藤沢は中高一貫校となっている。

「『慶應高校』といえば、いわゆる『塾高』と呼ばれる慶應義塾高校のことを指し、慶應幼稚舎、慶應中等部からエスカレーター式で上がってくる生徒が多いこともあってか、4高校のなかでもっとも慶應カラーが強い。志木校と湘南藤沢校とは校風も大きく異なる」(慶應大学OB)

一般入試、推薦入試ともに狭き門

 そんな慶應高校に入学するには主に3つのルートがある。まず一般入試だが、偏差値的には筑波大学附属駒場高校、開成高校などの1ランク下。渋谷教育学園幕張高校、横浜翠嵐高校、早稲田大学高等学院などと同レベルとされている。2023年度の一般入試による入学予定者数は約280名、入試の倍率は約2.8倍(出願者数ベース)となっている。安田教育研究所代表の安田理氏はいう。

「ここ数年、同系列の大学へ内部進学できる付属校志向が強まっているなか、慶應高校も高い人気を誇っており、直近3年の受験者数は常に1000人を超えている。偏差値的には毎年多少の変動はみられるものの最難関といっていいレベル。23年度入試では合格者数457人に対し入学予定者数は283人となっており、合格者のうち約170人が別の高校に進学している。慶應高校の学生はほぼ100%が慶應義塾大学に進むため、合格者のなかで東京大学や京都大学など難関国立大学への進学を考えている一定数の学生が、最終的に併願した他の私立高校や公立高校を選んでいる。一方、慶應高校より高い偏差値の高校に合格しても、最初から第一志望で慶應高校に進学する学生もいる」

 また、大手塾関係者はいう。

「一般入試についていえば説明は不要でしょう。国内の高校で最難関レベルなので、中学3年生のときに塾に通い一日10時間以上、平気で勉強してきたような子たちが競う。現実的な話として、中学3年間『部活漬け』だったというような子が合格するのは至難の業。ただ、慶應高校の学生はほぼ100%近くが内部進学で慶應義塾大学に進学するため、医学部や東京大学・京都大学を狙うような子は、そうした受験対策をしっかりしてくれる他の難関校に流れる傾向はある」

 ちなみに、甲子園優勝を受けて来年度入試で慶應高校を受験する人数が急増し、競争率が上昇する可能性があるのかが気になるところだが、安田氏はいう。

「『記念受験組が増える』という意味で倍率が上がる可能性はあるかもしれないが、慶應高校を受験するような学生は中学1年次から対策を立てて受験勉強しているケースも珍しくなく、現在中学3年生の子が今から慶應受験の勉強を始めても間に合わない。実際の入試では実力のある上位の子たちの戦いになるので、倍率が上昇してもそれほど変わらない」

 2つ目が推薦入試だ。慶應高校は他の野球強豪校とは異なり、推薦入試において明確な基準が設定されおり、野球の成績が秀でていて、入学を熱望しているからといって、入学を確約することはない。まず書類審査では中学校での内申点が9科目で38以上(満点は45)であることが求められ、文化活動・スポーツ活動でめざましい実績があることも条件となる。加えて面接・作文試験が課され、いくら野球部が欲しいと求める学生であっても下駄を履かせることはない。

「日々野球の練習に励んで目覚ましい結果を上げて、かつ英語・国語・数学・理科・社会に他4科目を加えた全科目が5段階中4以上である必要がある。さらに入学者数の枠も少ない。一般入試よりも難易度は高いともいえる」(同)

 ちなみに各種メディアで伝えられている慶應高校関係者らの証言を総合すると、野球部員の構成は、推薦入試組が2~3割、一般入試組が約3割、内部進学組が約4割だという。今回の甲子園大会でベンチ入りした20人のうち、一般入試組はわずか1人、レギュラーメンバーである背番号1~9番のうち8人が推薦入試組となっており、推薦入試組が野球部の主軸となっているのは事実だ。

慶應に入る価値

 そして3つ目が内部進学だ。中学校に当たる慶應義塾普通部、慶應義塾中等部の学生はほぼ100%が系列の高校に進学することができるため、将来慶應高校の野球部に入るためにこれら2校に入学するという手段も考えられる。

「普通部も中等部も偏差値的には早稲田大学高等学院中学部や早稲田実業中等部、海城中学校、筑波大学附属中学校などとほぼ同じランクで、最難関といっていい。普通部・中等部あわせた入学者数は、慶應4高校あわせた入学者数よりもずっと少なく、また中学受験率は首都圏でも約2割ほどで、それこそ小学校4~6年次の3年間みっちり受験勉強してきたような小学生の間での非常に激しい競争になる。そうした諸条件を踏まえると、『慶應への入りやすさ』という意味では中学受験よりは高校受験のほうが『入りやすい』といえる」(安田氏)

 いずれにしても慶應高校は極めて狭き門といえるが、慶應義塾大学OBはいう。

「特に幼稚舎や普通部・中等部から上がる同級生の友だちグループは、大学卒業後も一緒に旅行に行ったり『お嫁さん候補』を紹介し合ったりと、本当にみんな仲が良い。一生の友だちをつくることができるし、みんなそこそこ良い会社に就職しているので、情報交換ができてお互いに刺激にもなる。これは何物にも代えがたい財産。死ぬ気で受験勉強してでも入る価値がある学校だし、だからこそOBたちはみな、自分の子どもを慶應に入れたがる」

安田理/安田教育研究所代表

安田理/安田教育研究所代表

東京都出身。大手出版社にて雑誌の編集長を務めた後、教育情報プロジェクトを主宰、幅広く教育に関する調査・分析を行う。2002年に安田教育研究所を設立。教職員研修・講演・執筆・情報発信、セミナーの開催、コンサルティングなど幅広く活躍中。各種新聞・雑誌、ウエブサイトにコラムを連載中。
安田教育研究所

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