ふるさと納税が、制度開始から10年を迎えた。制度開始当初は奮わなかったが、2016年度から制度が大きく変わった。その一部が税控除されるが、それまではかなり面倒くさい手続きを必要とした。16年度に制度が簡素化されると、一気に寄付額が急増。税収が少ない市町村もこれを機に、ふるさと納税を積極的にPRするようになった。豪華な返礼品を揃えるなどして、ふるさと納税の機運は高まった。
テレビで返礼品が紹介されたり、雑誌が各地の返礼品をカタログ風に特集したりしたこともあり、返礼品合戦は過熱した。市町村は豪華な牛肉や酒、海産物などを返礼品に用意。ふるさと納税で、50億円を荒稼ぎする市町村もあった。寄付者にとってお手軽な節税であり、“官製通販”でもあった。
その認知度が向上するに伴い、返礼品合戦はますますヒートアップ。家電製品や高級ワインといった、地方の産品ではない返礼品も登場。もはや、ふるさとを振興するための制度ではなく、単なる財源の奪い合いになっていた。
ただし、市町村があの手この手でふるさと納税を増やしても、豪華な返礼品を贈れば返礼品の原価や発送などの人件費・事務費などにより差し引きゼロ。得られる税収は、労力の割に小さい。これでは、単に面倒な事務が増えただけにすぎなくなってしまう。それでも市町村がやめられないのは、「ほかの市町村に、自分たちの税金を取られるから」という恐怖感と、「豪華な返礼品を用意していないと、『なぜ、うちのまちは、ふるさと納税の返礼品がないのか?』という市民からのお叱りの声があるから」(地方自治体関係者)だという。
あまりにも趣旨を逸脱した返礼品のラインナップに、さすがに東京23区などは不満を爆発させる。17年には総務省が自治体に返礼品を寄付金の3割以下にするよう通知した。いわば、23区の言い分を飲むかたちで、ふるさと納税は冷や水を浴びせられる。
しかし、総務省の通知に法的な強制力はない。そのため、群馬県草津町などは総務省の通知を無視した。こうした例外はあるが、多くの市町村は総務省の言いなりになった。総務省は全国の自治体を統括する官庁。いわば、市町村は生殺与奪の権を握られている。総務省に睨まれたら、地方の市町村は生き残れない。結局、多くの市町村は総務省に従い、返礼品を縮小させた。