謎の“慶應ガール”の生態
――近年は女子学生が増えています。
オバタ 親世代には「慶應のほうが女子比率が高い」というイメージがあるかもしれませんが、2005年度に逆転しており、2017年度は早稲田で37.1%、慶應で36.5%となっています。早稲田の広報に「慶應に負けないところは?」と聞くと「国際化と女子比率」という答えが返ってきました。
本書では、「ワセジョ」の変化についても論じていますが、「慶應ガール」については掘り下げることができませんでした。それぐらい、とらえどころがなかったというのが正直な感想です。実際、取材を重ねても本音が語られている感じがしませんでした。見た目も中身も「レベルが高いなぁ」と思わされる学生が多かったのですが、どこか人目を気にして自分の人生を演じているような感じがしましたね。
その点、早稲田の女子はなんでも話してくれる。受け答えもしっかりしていて、「男子と偏差値で5から10ぐらい違うのでは」と感じるほどでした。一昔前と違って、おしゃれな学生も多いです。もっとも、男子も女子も野暮ったい学生が存在できる点も早稲田らしさであり、今も健在です。
――就職状況はいかがでしょうか。
オバタ 慶應が有利ですね。いわゆる「早慶枠」がある企業でも、実態としては慶大生の評価のほうが高いようです。先ほど述べたように、早稲田は学生の質にばらつきが大きく、人事にとって「慶應は“安パイ”」という感じです。学生の質だけでなく、産業構造の変化もあり、いわゆるコミュニケーション能力を重視するようになったため、いろいろな意味で慶應的な要素が有利になっているとも言えますね。
ただ、慶應には「慶應病」という言葉があります。就活で大企業や業界トップ企業しか受けないことですが、まわりの目を気にしているのでしょう。あるベンチャー企業経営者は、「両大学の違いは感じない」としつつも、「会社立ち上げの頃は(社員に)早稲田出身しかいなかった。慶應が増えてきたのは、ちゃんとした会社になったということ」と話していました。
採用担当者に取材を進めるなかで、「学力やコミュニケーション能力、社会性で上回る慶應」「個性や意欲、人柄で評価される早稲田」という違いが見えてきました。
――前回、「地方の優秀層の早慶離れ」というお話がありましたが、今でも早慶はおすすめできるのでしょうか。
オバタ その子のやる気と経済状況によるとしか言えないです。地方が経済的に苦しくなっている一方で、学費も値上がりしています。奨学金という名で何百万円もの借金を背負って社会に出るのは不健全です。そこまでして早慶に行くべきかは、果たしてわかりません。
ただ、地元で働くにせよ、東京がどんなところかは知っておいたほうがいいでしょう。理系以外だったら、旧帝大よりも早慶のほうが教育レベルが高く、学生の多様性もあります。一生に一度の問題でもありますし、意欲があるのであれば、多少の旅費をかけても高校生のうちにキャンパスを見に行ったほうがいいとは思います。
『早稲田と慶應の研究』 「早稲田の政経、慶應の経済」と言われたのは昔の話。私学の両雄に今、大きな変化が起きている。バンカラを知らない早大生。ファッション誌の登場回数でワセジョに抜かれた慶應女子。偏差値、志望者数、早慶ダブル合格の際の進学先。司法試験などの難関試験対決にも異変あり。政財界のOB・OG人脈など、卒業後にも及ぶ早慶戦の“昔と今”を、さまざまな角度から取り上げる。早慶OB&受験生の親必見の目からウロコの新・早慶研究本。