学費高騰で慶應SFCは理系並みの水準に
――今後、早慶にはどのようになっていってほしいとお考えでしょうか。
オバタ 私が気になるのは、学費がずいぶん高くなったことです。早慶とも30年前は文系学部の授業料は40万円程度で、初年度納付金は70~80万円でした。現在の授業料は100万円近くになり、初年度納付金も120~130万円になっています。国際化や少人数教育を売りにしている国際教養学部(早稲田)や総合政策学部・環境情報学部(慶應SFC)は150~160万円で理系並みです。はっきり言って、子どもが2人いたら普通の家庭ではきつい。これは、ほかの私大や国公立大も同様に上がっています。少子化の原因のひとつではないかと思うぐらいです。
少人数教育や欧米型教育で一定の成果が出ることも確かだと思いますが、何がやりたいのかわからないまま入学する学生も多くいます。わからないまま授業で拘束され、自宅生が増えて通学時間が長くなり、少子化で塾や家庭教師といった割の良いアルバイトが減って、居酒屋やコンビニのバイトで忙殺される。その結果、学生が忙しくなりすぎてしまい、見ていても心にゆとりがないのが実情です。
少人数のアクティブラーニングは楽しそうですが、それが何かに結びついているかというと微妙です。「学生の成長」という観点で考えると、大学というのはモラトリアムの期間であることが最大の価値だと思います。暇だから友達とつるんで、そのなかで危機感が湧いたり、間違いをおかしたりしながら成長していくものではないでしょうか。
これは欧米流の教育をまねしたい文科省と授業料を上げたい大学の思惑が一致した結果ですが、今後は、ますます少人数・グローバル教育の導入と学費の高騰が進むでしょう。それらのすべてに反対するわけではないですが、せめてもうひとつの選択肢をつくることで複線化してほしいと思います。ゼミ以外はマスプロ教育をメインにし、たとえば年間授業料50万円以下で済むような履修の仕組みをつくるべきです。そうした教育でも、かつては傑出した才能が出ていましたし、それが肌に合う学生は今でもいるはずです。
かつて、早稲田は「教授三流、施設二流、学生一流」と言われましたが、いわば「教授三流」を復活させてほしい。優秀な学生が集まる早慶こそ率先して取り組んでほしいと思っています。「時代に逆行する」暴論だと言われるかもしれませんが、学費の高騰は看過できるレベルではありません。監修を務める『大学図鑑!』(ダイヤモンド社)シリーズは今年で20年目になりますが、続いているのは親世代が買ってくれているから。時代が変わっても、大学選びが切実な問題であることは変わっていないことの表れだと感じています。
(構成=編集部)
『早稲田と慶應の研究』 「早稲田の政経、慶應の経済」と言われたのは昔の話。私学の両雄に今、大きな変化が起きている。バンカラを知らない早大生。ファッション誌の登場回数でワセジョに抜かれた慶應女子。偏差値、志望者数、早慶ダブル合格の際の進学先。司法試験などの難関試験対決にも異変あり。政財界のOB・OG人脈など、卒業後にも及ぶ早慶戦の“昔と今”を、さまざまな角度から取り上げる。早慶OB&受験生の親必見の目からウロコの新・早慶研究本。