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腸内フローラの乱れ、自閉症・うつ病の要因に…加工食品の添加物や輸入肉の残留ホルモンに懸念

文=小倉正行/フリーライター
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「Getty Images」より

 現在、ヒトの腸内細菌問題が世界的なトピックになっている。ヒトの体内の腸内細菌は約500種類、37〜40兆個におよび、全重量は約1.5キログラムにもなる。腸内フローラ(細菌叢)を形成し、私たちの健康を左右することが最近の研究で明らかになっている。

 特に、脳腸相関としては、腸内フローラの動向が不安、攻撃性などの気分などに影響し、自閉症やうつ病などの神経疾患を引き起こすことが解明されている。さらに、特定の腸内細菌の増加や減少によって腸内フローラのバランスが崩れることによって、潰瘍性大腸炎や過敏性腸症候群、大腸がんの危険因子となり、さらにメタボリック症候群や花粉症などのアレルギーにも関与していると指摘されている(「食べもの通信」<2021年7月号>順天堂大学名誉教授・佐藤信紘論文などより)。

 現在、多くの食品添加物が加工食品に使用され、野菜などでは農薬残留問題が指摘され、肉類では残留抗生物質、輸入肉の残留ホルモン剤などが懸念されている。加工食品の市場規模は、2010年の21兆5527億円から年々増加し、21年には6%増の22兆9108億円になると予測されている。牛肉や豚肉も輸入が急増し、残留農薬が懸念されている中国野菜の輸入も増加している。

 他方、06年から17年にかけて子供の自閉症、学習障害、注意欠如多動性障害が急増していることが統計上明らかになっている。文部科学省調査によれば、06年と17年を比較すると、自閉症は3912人から1万9567人と5倍に、学習障害は1351人から1万6545人と5倍に、注意欠如多動性障害は3912人から1万6135人と4.12倍になっている。

 ここで懸念されるのは、加工食品を通じた食品添加物や残留農薬、残留抗生物質、残留ホルモン剤の摂取増加が私たちの腸内細菌に影響を与え、腸内フローラのバランスを崩すことによって、脳腸相関で自閉症や学習障害や注意欠如多動性障害が急増しているのではないかという問題である。

食品安全委員会の責任増す

 では、食品の安全性をリスク評価する食品安全委員会は、食品添加物などの腸内フローラに対する影響評価を実施しているのであろうか。食品安全委員会は、現在使われている食品添加物や残留農薬、残留抗生物質、残留ホルモン剤のうち、委員会が設置された03年以降、新規に安全性評価を申請されたものについてリスク評価を行なってきた。そのため、委員会設置以前に使用が認められたものについては、腸内フローラに対する影響評価はなされていない。

 10年に食品安全委員会が決定した「添加物に関する食品健康影響評価指針」では、毒性試験は、亜急性毒性試験及び慢性毒性試験 、発がん性試験 、生殖毒性試験 、出生前発生毒性試験 、遺伝毒性試験 、アレルゲン性試験などであり、腸内フローラに対する毒性試験は明記されていない。

 また、「農薬(殺菌剤等)の腸内細菌への影響」に関する文書では、以下のように、具体的なハザードがないためリスク評価をしないとしている。

「令和元年、自ら評価にて、残留農薬、添加物、遺伝子組み換え食品が腸内細菌に与える影響を調査して、管理措置をとることを要望する提案があったが、具体的なハザードの記載がなかったことから、自ら評価の案件候補に該当しないと判断された」

 しかし、腸内細菌の研究が進むなか、この姿勢は正されるべきであり、国会で取り上げられるべき事案である。

小倉正行/フリーライター

小倉正行/フリーライター

1976 年、京都大学法学部卒、日本農業市場学会、日本科学者会議、各会員。国会議員秘書を経て現在フリーライター。食べ物通信編集顧問。農政ジャーナリストの会会員。
主な著書に、「よくわかる食品衛生法・WTO 協定・コーデックス食品規格一問一答」「輸入大国日本 変貌する食品検疫」「イラスト版これでわかる輸入食品の話」「これでわかる TPP 問題一問一答」(以上、合同出版)、「多角分析 食料輸入大国ニッポンの落とし穴」「放射能汚染から TPP までー食の安全はこう守る」(以上、新日本出版)、「輸入食品の真実 別冊宝島」「TPP は国を滅ぼす」(以上、宝島社)他、論文多数

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