昨年7月に亡くなった作曲家の平尾昌晃さんの遺産相続をめぐる争いが、泥沼化しつつある。
平尾さんの三男で歌手・DJの勇気さんは25日に記者会見を行い、平尾さんの3人目の妻・Aさんが昨年10月に平尾さんの音楽出版権管理会社「エフビーアイプランニング(以下、F社)」とマネジメント会社「平尾昌晃音楽事務所」の社長に就任したが、この就任経緯に不正があったとして東京地裁に「取締役の職務執行停止」などの申し立てを行ったと説明した。F社については、21日に地裁が申し立てを受理したという。
勇気さんの実母は平尾さんの2人目の妻だが、25日発売の「週刊女性」(主婦と生活社)のインタビューで、勇気さんは以下を主張している。
・Aさんは、平尾さんの会社から7000万円を横領した取締役を刑事告発しないばかりか、この取締役を平尾さんの一周忌に参列させた。
・F社は、平尾昌晃音楽事務所の株の大半を所有していたが、Aさんと平尾さんが結婚した5年ほど前、音楽事務所はF社所有の音楽事務所株をすべて850万円で買い、自社株とした。しかし、音楽事務所が所有する不動産だけで市場価値は8億円に上り、平尾さんの3人の子供が将来過半数の株を持つことになるF社による音楽事務所への支配を排除するため、Aさんが主導した。
・平尾さんの印税や著作権を管理するJASRACの相続同意書について、Aさんは勇気さんらに対し、複数人が受け取れる「共同用」は提示せず、Aさんのみが受け取れる「単独用」のみを提示し、継承者の欄は空白のまま勇気らにハンコを押させた。
・F社は昨年、株主総会を開いてAさんを代表に選任したが、株主である勇気さんに招集通知を出さなかった。
もし仮に勇気さんの主張が事実であるならば、Aさんの行為は法的に問題があるのだろうか。弁護士法人ALG&Associates執行役員・弁護士の山岸純氏は次のように解説する。
山岸弁護士の解説コメント
私の14年の職務経験のなかでは、「後妻」と「前妻の子供たち」という構図は、“資産家の夫(父)”の相続において最も揉める、まさに“争続”の典型的なパターンです。
なぜなら、もし「後妻」に自分の子供がいなければ、夫と死別した後は誰にも頼れず、少しでも遺産を獲得したいという思いがありますし、「前妻の子供たち」には、血のつながりがない継母であり、特に後年の再婚であれば「遺産目当て」にしか見えないケースが多いからです。
ところで、今回のニュースを見て、通常の「後妻」と「前妻の子供たち」という構図から発生すると想定される紛争の構図からすると、だいぶ違和感がありますので、まずはそこを指摘したいと思います。
【違和感1】
勇気さんは「5年ほど前に戸籍謄本を取ったら、父とAさんが結婚していたことがわかった。彼女に電話したら言うタイミングがなくてと話すだけ」(前出「週刊女性」より)とのことですが、
(1)勇気さんが父親が記載された戸籍を取得する理由が不可解です。勇気さんはご結婚されているとのことですので、父親の戸籍から新しい戸籍が作成されています。すでに分かれている父親の戸籍を取得する理由がわかりません。
(2)実の父親ではなくて、なぜ、わざわざAさんに結婚の事実を確認するのか、その行動が不可解です。「後妻」になった女性がわざわざ「前妻の子供たち」に結婚を告げるとは限らず、父親に聞けば足りる話です。