※各業界の最新ニュースをお届けする新ニュースサイト「Business Topic」がオープンしましたので、ぜひご利用ください。 7月4日に公示された参議院議員選挙(同21日投開票)の目玉の一つは、ブラック企業対策に関する政策(ブラック企業政策)であり、雇用政策だ。そこで、2回に分けて各党が政策として掲げるブラック企業政策と、それ以外の重要な雇用政策を検証していきたい。
今回は、ブラック企業政策について、詳細に検討していく。
昨年末の衆院選では共産党と社民党だけが掲げていたが、今回の参院選ではかなりの党が取り上げている。そこで、比例区に候補者を出している民主党、自民党、公明党、みんなの党、生活の党、共産党、みどりの風、社民党、日本維新の会、緑の党、新党大地、幸福実現党の12党のうち、ブラック企業対策に関係のある政策を選び、(1)ブラック企業対策の表記と定義、(2)情報公開、(3)取り締まり・労働法行使、(4)長時間労働規制の4つに分類し、検証を行う。
なお、民主、自民、みんなについては、マニフェスト・公約にあたる重点政策と別に政策集を発表しており、そちらのみに掲載されている場合は断りを入れている。
(1)ブラック企業対策の表記
民主、自民(政策集のみ)、公明、共産、社民、みどり
<解説>
まず最初の分類は、ブラック企業、あるいはそれに相当する言葉を政策に掲げているかどうかだ。該当するのは、民主、自民(政策集のみ)、公明、共産、社民、みどりの6党である。内容はともかく、これらの政党は、若者の労働問題をタイムリーに政策に取り込もうとしている。その姿勢は評価できるだろう。
問題は、ブラック企業という問題について、どのように表記しているかだ(表を参照)。ブラック企業という言葉はインターネットのスラングが発祥であり、学術的な定義があるわけではない。しかし、政策に掲げる以上、なんらかの表記をしなくてはならない。ここには、以下の2つの評価ポイントがある。
・ブラック企業という表現を使っている……民主、共産、社民、みどり
ブラック企業という表現が用いられているかどうか。自民、公明は、明らかにブラック企業を意識した対策を掲げながら、ブラック企業という言葉を慎重に避けている。これはブラック企業という言葉が、企業側から敬遠されていることに対する配慮であると推測され、トーンダウンの印象は免れない。
・若者の「使い捨て」を焦点化している……民主、自民(政策集のみ)、共産、社民
次に、ブラック企業の「定義」が問題となる。実は、ただブラック企業を「違法なことをしている企業」という基準で定義するのは間違いだ。、そうではなく、若者の「使いつぶし」がポイント。一般的にはブラック企業を「労基法などの法律違反をしている会社」として定義する議論も少なくないが、それははっきりいって間違いだ。
日本では過労死するほどの長時間労働ですら、それだけでは違法行為にはならない。逆に、日本では大企業であっても、サービス残業などの法律違反がこれまでもずっと常態化していた。ブラック企業問題の本質は、ただ違法行為を行うだけではなく、大学新卒を「正社員」として採用しながら、大量に使いつぶすというところにある。1~2年の勤務で過重労働を強いることで、すぐに退職してしまうのである。要するに、「若者を使いつぶす企業」なのである。その過程では、過労うつ、過労自殺、過労死を引き起こすこともまれではない。
法律違反だけに焦点を当ててしまっては、問題の焦点がずれてしまいかねない。この点でいえば各党とも、ただ「違法企業」を問題にするのでなく、若者の使い捨て(使いつぶし)という社会問題に焦点を当てていることは評価に値する(手前みそではあるが、私自身による各政党への働きかけや、拙著『ブラック企業』<文春新書>を各政党の政策担当者に紹介したことも、わずかばかりの影響があったものと思われる)。
(2)情報公開
民主、公明、共産、社民、みどり
<解説>
定義に続き、具体的な「対策」を見ていこう。よく議論されるブラック企業政策の典型が、情報公開だ(表を参照)。評価ポイントは、以下の2つに分けられる。(なお、みどりは「『ブラック企業』に関する情報公開」と曖昧に表記しており、以下のどちらにも分類しなかった)。
・離職率などの情報公開……民主、公明、共産、社民
まずは、企業に対する離職率などの情報公開の義務づけである。すべての企業に採用時の情報公開を問うているか、一定規模以上の企業だけかという違いがある。また、平均勤続年数を加えている政党もある。