「分断」という言葉は、今の世界を表現する上でもっともホットなトピックだろう。2016年の2つの象徴的な出来事――アメリカにおける大統領選挙でドナルド・トランプ氏が当選したこと、そしてイギリスが国民投票によってヨーロッパ連合(EU)から離脱を決めたこと――は、世界で起きている「分断」を私たちにまざまざと見せつけた。
しかし、日本にいる限りは、世界の「分断」がいったいどこまで進んでいるのか見えにくい部分があるだろう。世界中を渡り歩き、その社会の変化を見つめている高城剛氏は、『分断した世界』(集英社)でアメリカやEUの「分断」の姿を丁寧にレポートしている。
本連載「ここまで世界は『分断』していた」では、4回にわたってアメリカとEUにおける「分断」の姿を、本書からご紹介していく。第4回の最終回はイタリア。低迷が続くこの国について、高城氏は「日本と酷似している」と指摘する。
日本とイタリアの奇妙な共通点
では、いったいどのような部分が日本とイタリアで共通しているのだろうか?
ほかに、冷戦終結直後(日本ではバブル崩壊前後)に政治不信が極まり、小選挙区比例代表制を導入した点も似ているし、一党優位政党の存在も共通している。そして、「イタリアと日本は、長年低迷していること」も高城氏はしっかりと付け加える。
「似た国」ならば、おそらく未来も同じようなことが起こるはずだ。イタリアで起きていることは、やがて日本でも起きるかもしれない。そして、「新しい潮流はインターネットから湧き上がる」と高城氏は指摘する。
2018年3月4日に実施されたイタリア総選挙は、ルイジ・ディマイオ率いる「五つ星運動」が単独で31%あまりの票を集め、上下両院で第一党になった。極右政党である「五つ星運動」は「大事なことは国民投票で決める」という直接民主制度を掲げており、党員はインターネットを通じて自党の立候補者たちに投票し、そこで選ばれた者が実際の選挙戦に出馬する方式を取っているという。
インターネットで選ばれた者たちが選挙に出馬していく。日本でも、そのような未来が待っているのかもしれない。
若者失業率40%、「地下経済」の存在…
そんなイタリアだが、「経済が低迷しているのに楽観的な国」というイメージが強いだろう。それには理由がある。
イタリアの15~24歳の若者の失業率は、なんと40%。日本の失業率は6%なので、数字だけを見れば社会が相当に疲弊し、荒廃しているように思われる。ところが、日本とイタリアの双方に住んだことのある高城氏から見ると、「社会の悲壮感は日本のほうがはるかに上」なのだそうだ。
その背景には、数字には表れない南欧の「地下経済」の存在があるという。実際の正確な数字はわからないが、「GDP(国内総生産)の50%はあるかもしれない」と高城氏。そのため、豊かさの指標であるGDPが日本より下にランクされていても、イタリア人の実際の暮らしぶりは異なるのである。
それでも、イタリアの北部と南部の「分断」は問題だ。「五つ星運動」は貧しい人たちが多い南部からの支持を集めたが、北部では「同盟」が支持を受けている。この2つの政党は反グローバリズムで共通しているが、「連立を組むことはないだろう」と高城氏は述べる。
イタリアの分断は、いったいどのように変化していくのか。「似ている」からこそ、日本はこの国の歩む道を注視しなければならない。
(文=編集部)
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