9月に橋下徹前大阪市長の著書『政権奪取論 強い野党の作り方』(朝日新書)が出版され、さらに「文藝春秋」(文藝春秋/11月号)寄稿文の内容からも、「橋下氏が来年の参院選に出馬するのではないか」と憶測を呼んでいる。
ただ、それらで「野党」としての政治が強調されていることが意外だと受け止められている。著書では「野党の存在感が高まることで、与党議員はより真剣に国民のことを考えた政治をするはずだ」と語り、「文藝春秋」では「『安倍政権の他に選択肢がない』という状態も、安定支持率の要因です。要するに、野党が弱すぎるのです」と書いている。さらに著書では、自らの政治の歩みを反省。「国政政党の日本維新の会は失敗だった」とまで言ってのけた。
それは、どういう意味か。地域政党「大阪維新の会」は成功した。「日本の統治機構を変える」とし、道州制などの実現を訴え、今の47都道府県の仕組みは限界だと主張した。ここまではよかった。ところが、国政政党をつくってダメになった。国会議員は自民党の補完勢力になってしまい、統治機構改革は頓挫してしまった。中央省庁とつながっている自民党ではどだい、統治機構を変えるなど無理なのだ、ということだ。
「もともと橋下さんには、奥さんのOKが出たということで年初から大阪の府議や市議の間で、来年の参院選への出馬観測があった。橋下さんが政治から退いたのは、奥さんが反対だったからだといわれており、本人は未練があった。奥さんが反対したのは、子供が7人おり養育費などにお金がかかり、政治家では収入が少ないという理由だったともいわれている。女性問題が週刊誌に報じられて以降、橋下さんは奥さんに頭が上がらず、大人しく政界を引退したが、辞めて以降、相当稼いだ。講演料は1回200万円。テレビ出演のギャラも高い。その結果、『そんなにやりたいのなら』と奥さんが折れて、許可が出たという」(永田町関係筋)
政界復帰をめぐっては、「維新の立て直しが目的」「安倍晋三首相・菅義偉官房長官と定期的に食事をする親しい関係なので、自民党から出馬か」などと語られていた。それが、ここへきて、橋下氏が参院選に出る場合は野党から出馬する方向になってきている。
実は最近、橋下氏は以前から交流のある地方自治体関係者と話した際、「自分としては、もう一度、地域主権を含めた統治機構改革に挑戦したい」と語ったというのだ。そうなると、前述のように自民党のなかからは無理であり、野党として挑戦することになる。
「今の維新の会を壊し、参院選に向けた野党の政界再編に動く、という趣旨らしい。野党幹部のなかにも、こうした橋下氏の動きを察知したという話が出回っている。橋下氏の最終目標は総理大臣。自民党への対抗勢力として野党から総理を狙うということだ」(前出と別の永田町関係筋)
今のところ野党は立憲民主党を中心にした共闘路線だが、立憲がいまいち及び腰。来年の参院選に向け、野党共闘、野党再編がうまくいかずズルズルすると、橋下氏が野党の旗頭として出てくる可能性がある。
(文=編集部)