日本のテレビ報道はどう変わったか
同会のモニター調査は2003年4月にスタート。第1回は「テレビはイラク戦争をどう伝えたか」と題し、ニュース3番組の検証を行っている。今回で第20回となったモニター調査。約15年にわたる定点観測で見られたであろう大きな傾向について質問した。日本のテレビ報道は悪くなっているのか、良くなっているのか。
「モニターを始めてからは、NHKの政権寄りの報道、『ニュースステーション』(テレビ朝日系)や『NEWS23』の批判的視点を持った報道、このへんは各番組の路線として大きく変わってはいないと思う。ただ、全体としては萎縮する傾向にはある。特に第2次安倍政権発足以降、NHKだけでなくニュース報道全体に忖度が強まった感がある。最近、僕らの間で議論になっているのは、『報道ステーション』が今年7月頃から路線が変わってきたのではないかという点。非常に注目しています」(小滝氏)
「15年の間、モニター活動をやってきたが、その間にニュース番組がどう変わったかという視点は弱かったかもしれない。20回の報告書の内容を精査して考えてみる必要がある。いつ頃、何を転機にニュース報道が変わったかについては、個人的な見方だが、2001年、『ETV2001』(NHK)が戦時性暴力を取り上げた際、内容が改ざんされる事件があった。安倍晋三官房副長官(当時)をはじめ、若手議員がNHKに圧力をかけた。これ以降、戦争責任に関する番組はNHKから消えている。これはひとつの境目ではなかったかと思う」(戸崎氏)
「モニターをやっていて感じるのは、局によって傾向が違うこと。ここ数年、特にはっきりしてきている。具体的に言うと、『NHKvs.テレ朝、TBS』という構図。極端な話、私たちの間では『3つの局をモニターすれば、全体がわかってしまう』という向きもある。日テレ、フジはニュースに関して『鳴かず飛ばず』の姿勢が感じられる」(府川氏)
「放送を語る会」の原点には、「批評がないとテレビはダメになる」(小滝氏)という思いがある。テレビ番組の評価軸として、視聴者、メディアの双方が視聴率しか持ち得ない状況がいまだに続いている。ニュース報道低落の責任は、テレビ局や制作者だけにあるのだろうか。
(文=片田直久/フリーライター)